『愛と資本主義』中村うさぎ著

中村うさぎ『愛と資本主義』を読む。

一応小説という形をとってはいるけれど、これは自伝?だよねという感じ。病んでいて苦しいんだろうなあと思った。

多重人格の子が、ホストに救いを求めるという話なんだけど、手に入れたところで絶対満足感なんてないのに。きれいである、ということに執着する点は、そのまんま主人公のコンプレックスで、それを解消したくてホストに貢ぐんだろう。

こんなにきれいなあの人が、私を認めてくれたんだから、私にはその価値がある。そう思いたいんだろうけど・・・・どうかなあ。

きれいなことには価値がある。たしかにそう。外見の美しさだって大切だ。私はつい最近になってそのことに気付いたし、「中身さえよければいいの」という考えが狭小だとやっと理解したばかりだが。

だからといって、「とにかくきれいであればいい」とは全然思わない。

どんなに輝くばかりの美しさを持っていたって、中身がクズだったら軽蔑するよ。たぶん5分話したら飽きるし。きれいであろうと努力することは大事だけど、それを絶対的価値観とするのには無理がある。

小説の中のホストはとても美しい容姿と描写されていたけれど、全く惹かれなかったのはそこに中身がなかったからだ。浅いなあと思った。

さっきテレビで再放送していた「電車男」を見ていたときにも思った。そりゃたしかにエルメスはきれいだ。きらきら輝いている。だけど、電車男がそこまで自分を卑下することもないんじゃない? オタクだからなに? 人それぞれ、趣味があって当たり前だし、誰かに迷惑をかけるようなことでなければ自由だと思う。もっと堂々としていていいんじゃないかというのが、正直な感想。

自信と謙虚さのバランスって大事。同時に、美しさに憧れるのとそこに執着するのと、どこにラインを引くかっていうのも大事だと思う。

美に執着する姿は、見苦しい。化粧に命をかける人。同僚Aは、いつでもどこでもバッチリ化粧を決めている。どんなに忙しいときも、仕事の手は抜いても化粧に手抜きはない。

後輩をネチネチいびった後に、トイレで念入りにマスカラを塗る姿を見たときはぞっとした。妖気さえ、漂っている気がしたよ。

人間、少し話せばだいたいのことがわかる。気遣いができるか。空気が読めるか。政治経済芸能。どの程度の基礎知識をもっているか。

少し仲良くなりかけたけど、やっぱりダメだなあ。この子とは浅い付き合いだなあと思った友達がいる。

あまりにも、あまりにも政治経済に疎い。これは致命的だった。

大人なら、ある程度の知識があって当たり前だと思うけど、知っていて当然の基礎知識がない。興味もない。今日のことしか考えない。明日は必ずやってきて、それが幸福で、未来永劫続くと信じて疑わない。

今の日本は幸せな国だと思う。だけど、それは過去に努力した人たちがいたからだ。その人たちの思いが今の国をつくったと思うし、次世代に伝えるのは今の私たちの役目だと思う。

あんまり小難しく考えることもないとは思うけど、でも「自分さえ楽しければいい」という人を見ると、浅いなあと感じるのよね。やっぱり自分は社会の一員である、という自覚がないと。個人の生活の土台には、社会があり、国があると思うのだ。話していて、いい大人が自分のことしか考えていないのがわかると、かなりガックリくる。

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