『Out on a Limb』 Shirley Maclaine 著

英語の勉強になるから・・・ということで、シャーリー・マクレーンの本を読んでみました。精神世界の分野では、有名な本らしいです。

ネタバレも含みますので、未見の方はご注意ください。

結局最後まで、感動することはありませんでした。アメリカのショービズの世界で成功を収めた女優さんの、自分探し。シャーリーは決して悪い人ではないと思うけど、どこまでも「お嬢さん」という感じ。お嬢様の自分探し。

そもそも彼女が精神世界に傾倒していくきっかけは、とある政治家との不倫にあるわけですが、その描写も不愉快なものでした。

私たちの愛こそ本物。この世の「不倫」という形に苦しめられる私たちって悲劇よね。みたいな感じで、おいおい・・・と呆れてしまいました。有名な女優さんが出版する本です。当然、多くの人の目に触れるでしょう。彼の家族、奥さんや子供がこの本を見たとき、どんな気持ちになるか考えないのですよね。あくまで自分中心の目線でしかない。私がこの不倫相手Garyの妻、もしくは子供であったなら、怒ると思います。

自分がやられて嫌なことは、相手にもしてはいけない。それは大原則だと思うのですが、シャーリーには相手の気持ちを推し量る部分が、すっぽり抜けているようです。それなりに恵まれた家庭で、愛情に包まれて育ったシャーリー。もしも自分の父親が有名人と不倫して、家庭はそのせいで滅茶苦茶になり、後に父親の不倫相手が「私たちの愛は本物。彼の家庭は偽者」なんてことを出版したとしたら、どんな気持ちがしたでしょう?

まあ、いろんな夫婦がいるし、もしかしたらGaryの奥さんは悪妻で、Garyは本当に苦しんでいたのかもしれない。だけど、子供たちは? 少なくとも、子供たちのことを考えれば、ああいう「私たちの愛こそが本物」的記述は避けるべきだったと思います。

そしてシャーリーは、さまざまな不思議体験をし、またオカルトな世界に足を踏み入れていくことで自分の人生を見つめ直すわけですが、後半、あっさりGaryと別れたのにはびっくりしました。結局そうなのね?という感じ。

あまりにもあっさりだったし、そこに教訓めいたものや、反省も見当たらないし。よくある不倫の結末、という印象を受けました。激しく燃え上がるような感情なんて、そう何年も続くものじゃありません。

シャーリーはチャネリングに関しても、「当たった」とびっくりして信じ込んでいるようですが、私は胡散臭さを感じました。占い師が、相手のことを調べておくのはよくある話だし、そういう警戒心がシャーリーにはなさすぎる。

中国という国についても、絶賛してましたね。共産主義って素晴らしい、理想の国、と思っていたようです。これは周囲の人間に「表面しかみていない」とたしなめられた部分もあったようですが、このエピソードだけでも、シャーリーがどんな人物かわかるような気がします。

挫折を知らずにきたお嬢さんの、悪意のない傲慢さが伝わってきました。私はこういうお嬢さんって苦手です。ちょっと嫉妬も入ってます(^^; その純粋さが羨ましくもあるというか。

だけど仕方ない面もあるのかな。失ってみて、初めてわかることもあると思うのですよ。シャーリーはたまたま順調にやってきた。だから、他から見て傲慢に見えるのかもしれない。自分が持っているものの価値に気付いていないから。失わなければ気付かない。痛みは自分が経験しなければ、思いもよらない。

自分自身を振り返ってみると、やっぱり痛い目をみて初めて謙虚になった部分はあるなあと思います。なにもかもが順調なときは、それで当たり前みたいな気がしていた。周囲に対する気遣いも、なかったかも。そもそも、痛みという概念に気付くことがなかった。

悩んだり苦しんだりすることで、初めて人を思いやる気持ちが生まれたり、痛みに共感することができるのかなあと思ったのでした。

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