舞台『マリー・アントワネット』には公式HPがある。その中にブログのコーナーがあって、キャストの楽屋紹介をやっているのだが、ついに!
カリオストロ伯を演じる山口祐一郎さんの楽屋が紹介された。
ああ・・・期待してたけど。山口さんのことならなんでも知りたいと思っていたけど。でも、見終わった後の私の気持ちは複雑だった。
これは失敗企画だったような気がする。他の役ならともかく、MA(マリー・アントワネット)の中で、黒幕たるカリオストロを演じている今、あの楽屋を見たくなかった。素の楽屋を晒す必要性を感じない。
どうして、演出しなかったんだろうなあと思う。どうせ全てを晒すわけがない。当たり障りのないところを写真に撮るなら、いっそ、完璧なるカリオストロ像を作り上げればよかったのに。この点については、山口さんというよりも、ブログ作成者のクリスティ、そしてその上司に苦言を呈したい気分。
生活感アリアリのプラスチックケース。「あ、私も使ってる♪」なんて喜ぶ気持ちよりも、現実をみせつけられたようでちょっと寂しい。
舞台上で美声を響かせる異世界の人も、幕が下りれば自分と変わらない人間なのだよね。公演の間だけ、帝劇の楽屋に荷物を置いて、化粧をし着替えをし、そしていつか公演が終われば、あのプラスチックケースに全てを詰めて去っていく。
化粧台の上に、見たくはない物体を発見してしまった。バックグラウンドを知らずに買っているんだろうけど、私だったら絶対買わない物。
それが企画なら、仕方ない。取材なら、喜んで受けますよ・・という意志を、カリオストロの扮装をして微笑む山口さんに感じた。本当は人一倍、自分のテリトリーに誰かを入れることに抵抗感を感じる人なんだろうけど。
髪の毛アップのカリオストロ。暖簾からひょいと顔を出してお見送りのカリオストロ。あぁ、普通の人だ。半分仮面を外したカリオストロ。
素顔の山口さん、楽屋裏の山口さんが見たいという気持ちはあれど、今回のブログのような紹介は、私はあんまり好きじゃない。
愚痴ってばかりもなんなので。もし私が企画するとしたらこんな風にしただろうというのを書いてみます。
まず、部屋は真っ暗にして、ろうそくの光のみ。暗いだろうから、あちこちにたくさんのろうそくを立てます。床には、ダークレッドのじゅうたんを敷き詰め、畳の面が見えないように。壁には、不思議な柄のタペストリー。猫足のテーブル、年代物のソファ。
フードをかぶり、巨大水晶の前でなにやら思案顔のカリオストロを、横からパチリ。ろうそくの光の陰影が、妖しさに拍車をかけるはず。
それから、ソファに座り、くつろいだ様子で黒猫を撫でる姿をパチリ。このとき、フードは外していて、端正な顔がはっきり見えていることが大事。黒猫は本物で、毛艶のよいものを希望。黒毛と、それを撫でる細く長い指の白さが、対照的に映るように。
なんなんだこの部屋は~!と叫びたくなるくらい、不気味で得体の知れない部屋に装飾してほしい。ブログの本文も、「カリオストロ様はご機嫌斜めのご様子で~」とか、「なにやら新しいアイデアに心を奪われておられるようで」とか、すっかりなりきって書いてほしい。
読む方も書く方も、ヤラセがわかっている前提で、いっそ遊びに徹した方が面白いのではないかと思う。今回の楽屋訪問は、裏が見られて嬉しかったという思いよりも、「夢をみさせてほしかった」という思いが強く残る回だった。