星から聴こえてくる音楽

12月18日(木)、会社を猛ダッシュで後にして、『エリザベート』を観るべく帝国劇場に向かった。だけど間に合わず、到着したときにはすでに開演しており・・・。

 もともと、当日券を買うつもりだったのだけれど。千秋楽が近いから売り切れてるかな?まあ、大丈夫だろうと、1枚くらいはあるだろうと気軽な気持ちで。

 チケット売り場の窓口は閉まっていて。開演後の劇場前はガランとしていた。時おり、私のように遅れてきた人が、急いだ様子で劇場内に駆け込んでいく。私はその姿を、ただぼんやりと眺めていた。チケットがないから、入れない。

 というわけで、朝海さんのエリザベートを見る機会を、逃してしまいました。すみません、もしかしたら感想を待っていてくださった方もいるのかもしれないのですが。調べてみたら、この先は帝劇での千秋楽まで、平日夜や休日に、山口さんと朝海さんの回はないのです。組み合わせに偏りがあるのが残念(^^;
 

 せっかく来たのになあ。どうしようかなあ。
 なんだか名残惜しくて、その場にしばらく立ち尽くしていたものの、いつまでもそこにいたところでどうしようもないので、歩き始める。丸の内仲通りのイルミネーションは綺麗だったけど、なぜか今年はピンとこない。

 そこで、日比谷公園を歩いてから、帰ることにした。

 すっかり暗くなった公園を奥へ進むと、現れるのは松本楼の豪華絢爛なオレンジの光。私はすっかり、その情景に見惚れてしまった。

 いいね~、こういうの。
 クリスマスイルミネーションで綺麗に飾り付けられた家の中から洩れる、暖かな光によく似ている。闇の中に浮かび上がる、異空間。今そこでは、どんな人たちが食事を楽しんでいるんだろう。どんな人生が、そこにはあるんだろう。

 食器の触れる音や談笑が伝わってくるようで、胸を打たれた。

 銀杏の木の下に敷きつめられた枯葉のじゅうたんも、素敵だった。アスファルトの道の上は、たぶん毎日掃き清められているんだろう。だけど土の上は枯葉がそのままになっていて、暗闇の中ではその黄色が、柔らかく美しく見えた。

 木に囲まれていると、空気がおいしく感じられる。
 私は冬になると、ますます、山に行きたくなってしまう。山に行く代わりとして、こういう公園の深い緑の中に身を置いて、深呼吸する。

 山の中で、星を見たいなあと思う。誰もいない静寂の中で。寝転がって、空を眺めていたいなあ。この時期は寒いだろうけど、その代わりに虫も出ないし、空気が澄んでる。以前に、彗星捜索家の木内鶴彦さんの本を読んだとき、毎日八ヶ岳で星を観測するという話に憧れを抱いた。

 星と向き合う毎日って、どんな気持ちがするのかな。宇宙の広さを実感するような、不思議な気分になるんだろうか。
 木内さんによると、天の川は、とあるクラシックの曲、そのものだそうです。天の川を見ていたら、いつもその曲が浮かんでくると。作曲者は、私も好きな人だったので、嬉しくなってしまった。

 星と音楽、といえば、私の思い出はジョージ・ウィンストンの“Longing/Love”(日本語タイトルは、「あこがれ/愛」)というピアノ曲。

 
 昔、プラネタリウムを見に行くといつも、上映前にはこの曲がかかっていて。それがあんまり名曲だったもので、このメロディを聴くと自然に星空が浮かんでくる。上映前、目を閉じて深く、座席に身を沈めたときのあの感覚。耳に流れこむピアノの音が心地よかった。
 

 そして、なぜだか同時に、『ガラスの仮面』の速水さんのエピソードも思い出してしまうのだ。マヤと偶然、プラネタリウムで会っちゃうシーンね。私は今、この曲を聴きながらブログを書いているのだが、そのときの速水さんの心情にはぴったりの旋律ではないだろうか。
 美しく静かに煌く星をマヤと2人で見ているけれど、ただ純粋な幸福感というのではない。その向こうにある終焉を見据えた寂しさの滲む曲、というか。

 今だけは。ここにいてくれてありがとう。人工の光でも。マヤと一緒に見られるなんて思わなかった。好きだけど、ここを出てしまえば、夢も終わるね、みたいな。

 星はロマンです。今年はイルミネーションの灯りよりも、静かな星空に心が惹かれます。 

生き方は星空が教えてくれる
木内 鶴彦
サンマーク出版

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宇宙(そら)の記憶—彗星捜索家の臨死体験
木内 鶴彦
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