『RURIKO』林真理子 著

『RURIKO』林真理子 著を読みました。以下、感想を書いていますが、ネタバレ含んでおりますので、未見の方はご注意ください。

この小説が、浅丘ルリ子さんをモデルに書かれたということに、読んでいる途中で気付きました。有名なスターの名前がそのまま、たくさん出てくるので興味深かったです。

今回初めて知ったことが2つ。

その1。浅丘さんが石原裕次郎さんを好きだったということ。

その2。浅丘さんが、美空ひばりさんと結婚する前の、小林旭さんとつきあっていたということ。

この2つ、今まで全然知らなかったです。というか、浅丘さんがモデルだとはっきりわかるような本で、この事実を公表してしまっていいのか?と、人ごとながら心配になったりして。当時、噂としては、皆が知っていることだったんだろうか。

当然、浅丘さんが文章に目を通した上で、出版されているんだとして。このインパクトはすごいと思う。週刊誌が書くのとは、全然違う。

今までの人生を振り返って、ふと。自分の歩んできた道を、本という形で残すのもいいかもしれない、そんな気持ちになって、林真理子さんの取材に応じたのかな? 読んでみた私の全体的な印象としては、「裕次郎さんへのラブレター」、です。

最初は、よくある憧れというか、初恋みたいな。そんな淡い気持ちだと思ったのですが。浅丘さんの人生の中の、一つのエピソードにすぎないと思ったその出会いが、その後、こんなにも彼女の心に残るものとなるとは。本の中で、裕次郎さんと出会った後の浅丘さんの心には、常に裕次郎さんの影が寄り添っていて。繰り返し繰り返し、消えない気持ちと、葛藤しているように思いました。

裕次郎さんの奥様は、女優だった北原三枝さん。

この本を読んだら、気分を害してしまわないだろうか、と、ちょっと心配になったりして。私が北原さんの立場なら、正直なところ、あまりいい気分にはならないと思う。

もちろん、浮気したとか、そういうことではないけれど。むしろ、思いは哀しいくらい、浅丘さんの一方通行で。裕次郎さんの心は、北原さんにあって。

だけど、読んでると迫ってくるものがあるのです。ああ、そうか。本当に好きだったんだなあって。きっと浅丘さんが今までで一番好きになって、忘れることができなかったのは常に、裕次郎さんだったんだろうなあって。

同じ俳優の仕事をしていて、共演することもあるわけです。手を伸ばせば、ぶつかるくらいの距離にいる。だけど、永遠に届かない、その苛立ち。

すぐ目の前には、北原三枝さんもいる。近い距離。

浅丘さんはきっと、裕次郎さんを眺め、寄り添う北原さんを眺め。いったい、自分と北原さんの違いはなんだろうと、不思議な気持ちになったのではないでしょうか。北原さんの位置に自分がいても、おかしくはないのに。こんなにも願うのに、と。

浅丘さんと裕次郎さんが映画の撮影でアフリカに行き、満天の星を眺めるシーンの描写が、とても美しかったです。

浅丘さんにとって、一番心を許せて気楽だったのが小林旭さんで。逆に、ずっと憧れ続け、怖れにも似た気持ちで慕い続けたのは、石原裕次郎さんだったのかな?と思いました。

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