『eclipse』Stephenie Meyer著 その2

昨日の続きです。『eclipse』Stephenie Meyer著 の感想ですが、ネタバレ含みますので未読の方はご注意ください。

なお、英語は原文のまま載せていますが、併記した日本語訳は自分でやっているので、多少変なところもあると思います。ご了承ください。

一番ぐっときたシーンは、ジェイコブを傷つけたといって自分自身を責めるベラを見かねたエドワード。戦闘前の、本来ならそれどころではないタイミングで、無理を承知でエドワードがジェイコブを迎えにいき、ベラに会わせる場面です。

もうね、そこまでしなくていいのに・・・って。十分すぎるほどエドワードは、やってあげてるのにって。この上まだ、ベラのために自分を犠牲にするの?って思いました。

ベラを置き去りにした負い目や、ジェイコブが傍にいるのを知りながら、彼に自分たちの甘い会話を聞かせた負い目があるとしても、です。

もう命がけですもん。

本当なら、ベラがめそめそ泣いてる場合じゃないというか、駄々こねてる場合じゃないんです。全部終わってから、ゆっくりジェイコブには償えばいいわけで。

というか、そもそもベラがエドワードを選んだ時点で、十分ジェイコブは傷ついてるんだから。もう放っておいてあげるのが優しさなんじゃないかと。

エドワードはその点、わかっていたような気がします。いつまでも夢をみさせておくほうが、残酷なんだってこと。だから、傍にジェイコブがいることを知りながら、わざと会話を続けた。そして、ジェイコブに引導を渡したんですよね。

自分たちは結婚すると。そして、ベラはエドワードの仲間になると。それが、ベラの意志なんだってこと。

少々荒療治かもしれませんが、いつかはわかることで。淡い期待をもたせるよりいっそ・・・と思ったのかもしれません。いくら偽りの仲良しごっこを続けたところで、終わりの日は見えているわけだから。ベラの甘さが余計なトラブルを招く元凶でしかないことが、エドワードにはお見通しだったはずです。

それでも、ベラの涙には勝てない、エドワードの誠実さに心を打たれました。惚れちゃったほうが負けなのね・・と。ベラが傷つくのを見るくらいなら、自分が傷ついたほうがましなんですね。けなげすぎる。なにが悲しくて恋敵を恋人の元に連れて来なくちゃいけないのか。そして、二人が、彼らだけで会話する場を設けてあげなくちゃいけないのか。

エドワードがこんな罰ゲームみたいなことをやらされるような、どんな悪いことをしたんだ??って思いました。

おまけにその後、ジェイコブとベラは、キスして愛を確認しあうという・・・。

エドワードの立場なし・・・。

さすがにエドワードに罪悪感を感じて、自己嫌悪を感じるベラですが。エドワードの態度は意外なものでした。

>You love him.

>He murmured gently.

>ジェイコブを愛してるんだね。

>彼は静かにつぶやいた。

怒らないんです。エドワード。

この巻で、エドワードの好感度は急上昇しました。

吸血鬼なのにモラルがある、というか、古風なところがいいです。

ベラに贈った指輪が、両親の結婚のときのものだったというのが素敵です。買ったものより、心がこもっている気がしました。本当に大切な人にしか、渡さないだろうから。

ずっと独りだったエドワードが、初めて心を許した相手。

それと、感動したのがプロポーズ。

片膝ついてのプロポーズって、憧れです。こういうのっていいなあ。きっと、結婚すればいろんなことがあるだろうけど。その始まりはやっぱり、きっちり決めてもらいたいものなのです。それは、お願いであってほしいなあと。「結婚してください」ってね。「結婚しよう」じゃなく。

だって、Yes と答えた瞬間に、その女性は人生最高の味方になってくれるわけですよ。どんなときにも傍らにいて、もう一人の自分に等しい存在になって。同じ道を歩いていく。

親より兄妹より友人より子供より。ずっと長い時間を一緒に過ごす相手だから。心のすべてを明け渡す相手だからこそ、その始まりは、こうであってほしいなあと。

タイトルの eclipse(月蝕)ですが。

文中でジェイコブがずばり、こう言ってましたね。

>The clouds I can handle.

>But I can’t fight with an eclipse

>雲はどうにかできても

>月蝕にはお手上げだよ

月蝕。それはエドワードの不在を象徴するもの。

月の欠けた夜空の下では、ベラはもう生きていけない。きっと、ジェイコブは自嘲するように呟いたのでしょう。

この本の表紙の、ちぎれかけた赤いリボンの絵が印象的でした。センスがいいです。いろんなものを暗喩している気がする。

ベラとエドワードの絆。ベラとジェイコブの絆。そして、人間と吸血鬼。

綺麗なベルベットは、もしかしたらエドワードの心そのものなのかもしれない。二つにちぎれそうになって、かろうじてつながっている、そのギリギリのライン。

そうそう、タイトルが象徴するものといえば、私は以前、第2巻の『new moon』について、ベラにとってのエドワードが月だったのか?と書きましたけれど。『new moon』の中で、エドワード自身がこんなことを語っていました。

>Before you, Bella, my life was like a moonless night.

>ベラ、君に出会う前、僕の空には月がなかった。

続けて彼は、ベラを流星に例えます。そして、その光と美しさに目を焼かれて、自分にはもう、星のささやかな光が見えなくなったと告げるのです。

流星が地平線に沈んで後、今までと同じように星は光るけれど、流星の光を見てしまった自分には、もう星の光は見えないと。

そして、すべてが意味を失ってしまったと。

美しい表現ですね。

つまりnew moon は、ベラのいない夜空、エドワードの心象世界を表す言葉だったようです。

最後に、『eclipse』の中で一番好きなセリフを挙げておきます。

>You are my first priority.

>君が一番大切なんだ。

これ、日本語にするとあんまりピンときませんが、first priority という言葉の重さがいいんですよね。この一言の後ろに、エドワードの決意が感じられるから。きっとなにがあっても、どこにいても、ベラのためなら全てを犠牲にしてでも、駆けつけてくれる。最優先事項・・・って日本語直訳にしちゃうと、なんだかアレですが。

究極の殺し文句だと思いました。

最終巻となる第4巻『breaking dawn』を読み終えたら、また感想を書きます。

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