前回の続きです。
別冊花とゆめ3月号『ガラスの仮面』美内すずえ 著の感想を書いています。ネタバレしていますので、未読の方はご注意ください。
それにしても、豪華客船の甲板で見る朝日って、乗客ならみんな楽しみにしてると思うんですが。
そんな中、抱き合ってるカップルって、迷惑すぎる(^^;
マヤと真澄のカップルなので(しかも漫画だし)許せますけど、これ現実にあったら嫌だろうなあ。
>もうしばらく
>このままでいさせてくれ・・・
>たのむ・・・!
このシーン、ちょっとホロリとしました。
速水さん、今までこんなに真摯に、人に頼みごととかしたことあったのかなあ。
あ、もちろん、秘書の水城さんにコーヒー頼んだりとかは別として(^^;
本当にこれが欲しい、こうしたいって思って、それを頼んだこと、なかったんじゃないかなあと思うのです。それは子供の頃に、かなわないことを知ってしまったから。
願って、がっかりすることを恐れるあまりに。
誰かに何かを頼むことを、しないまま年を重ねたような。
でもマヤと出会って、感情があふれだして。抱きしめたまま、初めて無防備に「このままでいさせてくれ」と弱さを見せた。マヤが拒まなくてよかったー。拒絶されたら、相当な傷になったと思います。
そして、この号のクライマックス。
それは、速水さんが伊豆の別荘にマヤを誘う場面です。
誰の心にもある、特別な場所。
そこへ行けば素直になれる、大切な場所。
自分と昔からの部下(おそらく聖さん)以外は、誰も足を踏み入れたことのない秘密の場所。
そんなところに「今度遊びにくるか?」だなんて、大胆な誘いですね。それだけマヤは、速水さんにとって大切な人なんだなあ。
そして、言っちゃった後で冷や汗かいてる速水さんの表情が、なんともいえません。
でも、本当に面白いというか興味深いのは、前回も書いたのですが、速水さんとマヤの心のすれ違いなんです。二人ともすごく可愛らしい。
>いいのか? おれひとりだぞ
>あたしもひとりで行きます
>いいのか・・・? 本当に・・・?
>はい・・・! 迷惑でなければ・・・
マヤは、速水さんの気持ち、全然わかってないと思う。だからこそ、頬を染めながら慎重にお互いの真意を探りあう二人の初々しさが、強調されるのです。
これ、たぶん速水さん的には、「パーティとかじゃないよ。ばあやがいて食事を用意してくれるとか、夏の林間学校とかでもないよ。そういう楽しいなにかを予想してるんだったらそれは違う。別荘には、君にとってなにか楽しい話題を提供してやれるわけでもない、つまらない俺がいるだけだよ。それでも君は、俺しかいないその別荘に来てくれるというの?」
これくらいの気持ちだと思うんですよね。
そしてもう一つ。
マヤも二十歳を越えているので、大人な意味での覚悟はあるの?という気持ちも、少しあるのかなと。
それに全く気付かない年齢というわけでもないので。
だからこそ、本当に好きで、来てくれるの?という。
そういう欲望さえ、「いいのか・・・?」という速水さんの表情をみると、そこにいるのは中学生くらいのまあくんにしか見えず。その欲望すら清いと感じてしまうんですよねえ。
しかーし。
マヤ、全くその意味に気付いてないと思う(^^;
マヤは、単純に速水さんが別荘に招待してくれたのが、嬉しかったんじゃないでしょうかね。その別荘が、速水さんにとって大切なものだ、ということはわかってる。だからこそ、そんな特別の場所に招待してくれる気持ちは、間違いなく嬉しかったことでしょう。
でも、それがイコール、速水さんの気持ちに気付いた、ということにはならないと思うんですよね。
マヤの気持ちはこんな感じではないでしょうか。
よかった、速水さん、私に心を開いてくれている。きっと、阿古夜の演技を喜んでくれたからだ。速水さんの大切な場所に、私も行ける。同じ景色を共有できる。
どうしてだろう。今日の速水さんは不思議だ。とても脆くて、傷つきやすい目をしている。そしていつもよりずっと、本音で話してくれてる。
私やっぱり速水さんが好き。たとえ速水さんが私を、商品である女優だから大事にしてくれるんだとしても、それでも構わない。私、速水さんが好き。
たった一人で、速水さんしかいない別荘に行ってどうなるか。
それが何を意味するのか。
どうしてそこまで速水さんが葛藤しているのか。
その辺、速水さんが思うほど、マヤはわかっていないと思います。
それに気付かない速水さんが可愛い。
そして、彼を一心に慕い続けるマヤが、可愛らしい。
こうなると、波止場へ向かう桜小路君と紫織が、ただの邪魔者にしか見えませんね。
桜小路君は、本来人気が出てもおかしくないキャラだと思うんですが、なんでこんなにうざったく感じてしまうのだろう(^^;
いい人なんですけどね。
普通に考えたら、マヤとお似合いなのは、大都芸能社長で11も年上の速水さんではなく。同年代で同じ職業の、桜小路君なわけで。
マヤと速水さんの心のつながりなんて、目に見えるものではなくて。だから、それがわからない桜小路君が、マヤに近付くのは別に、二人に対して失礼でもなんでもない行為なんですけど。それでも。
読者は感じてしまうのではないでしょうか。
桜小路、空気読んでくれ、と。無理とは知りつつ。
そして紫織さん。シオリー。
あーもう、この人は逆に、絶対空気読んじゃうだろうね。
下船のとき、誰より早く二人を見つけて、たとえ速水さんがどんな言葉を口にしたとしても。
速水さんに浮かぶ表情、マヤが見せる表情。
それこそ、勘がさえまくって、二人の心の交流を察知してしまうと思います。今以上に。嫉妬に狂ってしまうのでしょうか。
欲しいものを、なんでも手に入れてきたであろう女王様。だからこそ、その初めての「宝物」に執着するのでしょう。
自分は手に入れられない。でも、それを誰かが手にする、と思うから余計に。
桜小路君は、すべてがわかれば身を引いてくれると思うのですが。シオリーはどこまでもかたくなになって、速水さんを追いかけそう。
さて、4月号はどうなるのでしょうか。
私はあまり雑誌は買わないのですが、このところガラスの仮面を読むためだけに、別冊花とゆめを買っています。続きが気になります。