『そして僕は、途方に暮れる』大澤誉志幸

大澤誉志幸さんの『そして僕は、途方に暮れる』を聴いています。

淡々としたメロディーと歌詞が良く合っていて、しんみりした気持ちになりますね。

虚無感が、短い言葉からひしひしと伝わってくる感じで。

怒りというより、悲しみというより、虚脱のイメージ。

白い部屋で、ぼーっと足を投げ出して壁にもたれて。

ただ時間が過ぎるのを感じている、そんな絵が浮かびます。

言葉がすごく、気になる。何度も何度も、反芻してしまう。

そういうことって可能なのか?という疑問と、それなら確かに、世界はバラ色になるなあっていう期待みたいなものと。

独特な世界観。

ちょっとその発想、ドキドキするのです。

どんな気持ちで言ってるんだろう、と想像してみたり。

どういう、別れの状況なんでしょうね。

出て行った人の背中が、あんまり寂しそうで、悲しませたことを詫びる気持ちがあり。つらい思いをさせた年月を思い出して、だから明るい未来をその人に願うのか?

そこにはちょっぴり、投げやりな気持ちも、それから彼女に対する、意地悪な気持ちも感じてしまう。

君が描く理想世界なんて、どこにもない。

できるというなら、やってみればいい。

きっとそのときに、僕との生活を懐かしく思い出すだろうよ。

こんなことを思っていそうなのです。

だとしたら・・・意地悪だな(^^;

でも、そういう強がりを言ってる本人の痛み、みたいなものも伝わってきて。この人も無傷じゃないんだろうなあっていう。

呼吸するたびに胸が痛くて、その人の不在がこれから永久に続くんだと思うと耐えられなくて、その一呼吸ごとが、すごく胸に響いて。

大丈夫かな?と思うんだけども、大丈夫もなにも、ただそうしているしかない、乗り越えるしかない、せめて別れ際には優しい言葉をって。そう思った、残される側の人間が搾り出した、最後の優しい言葉。別れのメッセージのような。

切れた絆を、いなくなった静寂で確かめて。

まるで自嘲するみたいに呟いて。

本当はこれ、出て行く人の背中にかけた言葉じゃないのかもしれないと、そう思います。

誰もいなくなったときに、自分自身に呟いたのかも。

本当に出て行くときには、言葉にすることさえできなくて。黙って見送るしか、できなかったのかも、と想像しました。

曲が、変に盛り上がらないところもいいんですよね。

ただ、流されていく感じで。ドラマチックな出来事なんてなにもない。

ふっと、居るべき人がいなくなってしまった日。不意に空白ができた、というその事実だけを、ありのまま受けとめているようで。

さりげなさが、胸を打つ曲です。

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