マヤの試練

『ガラスの仮面』美内すずえ 著 の今後の展開予想や雑誌連載分について感想などを語ります。過去のネタバレを含みますのでご注意ください。

>印がついた台詞などは、雑誌から引用したものです。

☆印がついた台詞などは、私が勝手に予想したものです。

紅天女=梅の木は、巡り会った魂のかたわれ、一真に切られるのですよね。二人の間にどんなやりとりがあるのか、想像するしかありませんが、きっとそこには信頼があったのではないかと思います。

マヤが紅天女の心をつかむきっかけ・・・・それは、紫織の画策により、「速水さんがマヤに何も告げず、黙って紫織さんと結婚してしまうこと」ではないかなーと、この頃そう考えるようになりました。そのための伏線が雑誌の4月号だったのかなと。

速水さんは言いました。

>この先なにがあっても おれを信じてついてきてくれるか?

この台詞、こんな意味にとることもできますね。

☆この先もし紫織さんと結婚しても、信じて待つことができるか?

今の時点で、速水さんは紫織さんとの結婚が回避できるかどうか、判断はつきかねていると思います。もちろん婚約破棄できればそれがベストでしょうけれど、もしその交渉がうまくいかなかったら。
どんな選択であれ、速水さんはマヤを一番に考えるでしょう、たとえ一見して残酷(マヤにとって)なことであっても、それを選ぶ勇気を持つのが、速水さんという人だと思うのです。

どこかで、予感していたのかな・・と。
嵐の予感を。

>しばらくは会えないかもしれないが きっときみをいい形で伊豆に迎えたいと思う
>待っていてくれ

上記の台詞ですが、私が注目するのは、この「思う」の部分。
あくまで希望であり、予測であり、せつない願望であり。意識的なのかなんなのかわかりませんが、決して断定はしてないんですよね。
「きっと伊豆に迎える」と言いきってしまえば、約束になってしまう。

だから、「思う」と、曖昧な言葉にしかならなかったのかな。
自分の意志ひとつで、できることじゃないから。相手は紫織さんだから。

紫織さんが本気になって速水さんを手に入れようと思ったら。泣き落し(自殺未遂含む)か、攻撃しかありません。
紫織さんの強みは、鷹宮家のバック。
攻撃のための資金もコネも、その気になれば優秀なブレーンも用意できる。攻撃力は尽きることがないし、長期戦も可能。

速水さんが、不利な戦いを強いられるのは自明の理です。
今は、紅天女の後継者を選ぶ大事なとき。スキャンダルは命取り。

紫織さんはマヤを標的にするはずです。速水さん本人をどうこうしようと、効果がないのは十分承知でしょう。
マヤへの憎さもあるし、それ以上に、速水さんの一番の急所が、マヤそのものだから。

紫織さんは有利です。
どんな方法でもいい。ただの一撃でも、マヤをかすめることができたなら。スキャンダルは噂を呼んで、マヤの足をさらう。試演の場に立つことが叶わなくなれば、たとえどんな天才女優であれ、紅天女にはなれない。表現の場がないのだから。

そして、今このときを逃したら、マヤが紅天女を手に入れる機会は永遠に失われるわけです。後から挽回するチャンスは、ない。

鷹宮側からの攻撃の矢は、何度放ってもいい。何度失敗してもいい。時間がかかってもいい。試演までの間であれば、時間制限はありません。ありとあらゆる方向から、マヤを狙えます。

対する速水さんは。
もちろん、あらん限りの力でマヤを守ろうとするでしょうが、圧倒的に不利なんです。だって、ただ一度でも失敗すれば、それは敗北を意味するから。他の99パーセントの攻撃をよけたことなんて、なんの意味も持たなくなる。たった一度、失敗するだけで。

それに紫織さん。マヤに対するスキャンダルをでっちあげる、という攻撃だけじゃなくて。もしも本当に危険な攻撃をしかけてきたら・・・と思うと、マヤは女優生命ではなく、命そのものを危険に晒すわけで。

なおさら、速水さんの防御が一度でも失敗すれば、それは致命的な敗北になるわけです・・・・。
少女漫画だし、紫織さんがそこまで過激になるのか?とは思いますが、でも紅天女が究極の演目であるというなら、それくらいのことはあってもおかしくないかな・・・・。

もし紫織さんがマヤの命、までいかなくても、たとえば女優生命に関わる、顔に怪我をさせるようなことを目的としたなら、紅天女の試演までという時間制限はなくなり、それこそ生きてる限り、マヤには危険がつきまとうわけです。

速水さんがいくらマヤを守りたくても、完全な防御を一生続けられるのかどうか・・・・それはもう、無理です。はっきり言って。だったら、速水さんのとる方法はもう、一つしか残ってない。

紫織さんの好きにさせること。
つまり、このまま結婚してしまうこと、なんですよね。

どうみたって不幸な結末しか見えない結婚ですけど、仕方ない。紫織さんがそれしか認めないのだとしたら。いつかその不幸に気付いて、別れを切り出す日を 待つしかない。それが結婚から一年後か、三十年後か、もしくは死ぬまで、怨念でもって死の床まで速水さんを縛り付けるのか、それはわかりませんけれども。

そうなれば、紫織さんはマヤに手出ししないことを約束する代わりに、速水さんにも自分への忠誠を誓わせるだろうなと。つまり、「マヤと一切、接触を持つことを禁ずる」わけです。

事情説明の機会なんて与えない。そんな生温いこと、認めるくらいならきっととっくに、速水さんを解放してあげていたでしょう。

それで速水さんはなにを考えるかというと。

もちろん、本当ならマヤに会って、説明したいでしょう。結婚は本心でなく、やむにやまれずのことだと。
しかしマヤに会えば、マヤは泣きながら反対するのが目に見えています。

☆あたしのために、そんなことしないでください
☆あたしはなにが起ころうと、自分の精一杯で紅天女に挑むだけ
☆だから速水さん、あたしの傍にちゃんといてください

きっと上記のようなことを言って、マヤは悲しい選択の翻意を迫ると思われます。

速水さんは、もし自分が原因でマヤが紅天女を逃すようなことがあれば、一生後悔するでしょう。そしてもし自分が原因で、マヤの体に傷一つでもつくようなことがあれば、自分を一生責め続けるでしょう。だからマヤを説得することは諦めるはず。

マヤの気持ちも性格も、よーくわかってるから。伊達にずっと見守ってきたわけじゃないですよね。事情説明なんかしても、マヤは納得しないし、それでもこの結婚を強行すれば、さらに傷ついてしまうだけ。

だったら。紫織さんにばれる危険性を冒してまで、速水さんは、マヤに会って説明しようなんてことは考えないでしょう。大事なことだし、電話では無理。手紙も証拠が残るし、却下。

やっぱり歳の差で。マヤにはきっと、速水さんの決断は受けとめられないし、理解できなくて泣けると思います。心の負担を増すだけの結果になるなら、むしろ知らせなければいい。自分が悪者になり、マヤの前から消えればいい・・・・。

この場合、速水さんの出す結論は、これしかないですね。マヤにはその後いっさい会わず、ただ黙って、紫織さんと結婚してしまう。マヤがどんなに会おうとしても、拒絶。偶然にすれ違っても視線すら合わせず、無視。徹底的に距離を保つ。

マヤと幸せになろうだなんて、やはり自分には叶わない夢だったのだと、速水さんは諦めるのではないでしょうか。また、憎まれる元の自分に戻るだけ。マヤは泣くかもしれないけれど、これで紅天女には堂々と挑戦できるわけだし、身の安全もはかれるのだし。
そしてマヤはまだ若くて。女優としての才能にもあふれていて。

だから最初は泣いても、すぐに自分のことは忘れてしまうはず、と、速水さんは考えているのでしょう。時間がたてば、傷も癒えると。自分の愚かな愛情で、マヤの未来を奪うようなことだけは避けなければならないと、速水さんは真剣にそう、考えるでしょう。

そうなるとマヤは。

これは、一真に切られる梅の木と同じ立場ですね。マヤにとって、速水さんが黙って紫織さんと結婚することは、自分の心が死ぬのと同じ。
以下、そうなったときのマヤの心境を想像してみます。

☆どうして?どうして?わからない。
☆でも、あなたがそうしたいのなら、そうすればいい。
☆だってあなたは、あたしだから。あなたの選択にあたしは従うだけ。
☆あなたはあたし。あたしの魂のかたわれ

切られる千年の梅の木の悲哀を、マヤは速水さんとの別れで、体感するのではないでしょうか。

でも当初は混乱しても。苦悩と葛藤の向こうにあるのは、平穏と信頼なのかもしれません。結局、マヤは速水さんを信じると思うので。

信じて、と速水さんはマヤに言ったから。
これは人づての言葉ではありません。速水さんがワンナイトクルーズの下船後、直接、マヤにくれた言葉だったから。

それに対して、マヤはどう答えたか。

>はい 速水さん
>はい・・・!

力強く、こう答えましたよね。

速水さんは、約束を守る男。その魂のかたわれがマヤだというのなら、マヤもその言葉を守り続けると思うのです。

たとえ説明なんかなくても。その人を信じるということ。「信じてついてきてくれるか」という速水さんの言葉は、決して物理的なことを聞いているのではなく、この先ずっと心を添わせることができるか、マヤの意志を確認しているように、思えます。

会えなくても、遠くに離れていても、ちゃんと説明がなくても。ずっと心は傍にいてくれるか?という。

それが魂のかたわれなのでしょう。

だから紅天女も、最終的に、自分を切る一真を受け入れたのだと思います。そこにはきっと、不信も憎しみも、疑問もなかったはず。ただすべてを、両手を広げて受け入れたような。

速水さんの選択を受け入れ、自分の心を殺すことでマヤは、紅天女になれるのかもしれない、と思いました。

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