『翼を広げて』 DEEN 感想

DEENのヴォーカルは池森秀一さん。声がとてもいいのです。

『このまま君だけを奪い去りたい』も好きな曲なのですが、この『翼を広げて』という曲も大好き。夏の終わりにぴったりなメロディと歌詞です。

冒頭の一節だけで、想像がぶわーっと広がります。夏の間に急速に仲良くなって、あっという間に別れがきたのかなと。なんとなく、長い付き合いという感じがしない。

でも短いから浅いわけじゃなくて。普通に過ごす時間の何倍も、一緒にいて笑って泣いて、いろんなことがあったあとに。彼女のために別れを決意するっていう。そのせつなさが、胸をしめつける歌なのです。

君が飛び立つなら、邪魔はしない。そういう歌なのかな。

エールは送るけれど。でも静かに見送っている。最後の一節もいいですね。

一言に、万感の思いをこめて。二人で過ごした日々の全部。でも過去形。たぶんその思いを、彼女が知ることはないんだろうなあ。

でもそれでいいのです。彼女が気付かなくても。飛び立つ後ろ姿をそっと見送る優しさ。目には見えないけど、その祈りはきっと、未来の彼女を守ってくれるはず。

池森さんの声は独特で。心地よい湿っぽさがある。ただ明るく乾いた声ではなくて。その歌声を聞いていると、懐かしい記憶が蘇ってきたり。誰の心にもある、あの日の空気。

出会いは別れの始まりです。生きていればたくさんの人と出会うけれど、別れは必ず訪れる。そのときの胸の痛みを、思い出させる曲だなあと、思ったりします。

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