ウイルスで世界中が大変なことになっています。物資の不足で言えば、マスクや医療用具などが必要な現場に供給されず、医療現場で働く方々のストレスは日々、高まるばかりなのが現状でしょう。
次に、確実に不足してくるものとして、食料の問題があると私は思っています。今後確実に、そして長期的に、食料の問題が出てくるのではないなあ。
マスクもそうでしたが、たとえば日本が外国で生産している食料でも、もしその国が「輸出禁止。緊急事態なので接収する」といえば、それで終わっちゃうわけで(^^;
命に直結する食料は、まず国内で自給率を上げないといけない。そういう時代になったんではないでしょうか。そんなときに種苗法改正の話が持ち上がっていて。この内容がまた聞いてびっくりです。
登録品種に関して、自家増殖が禁止されてしまうというのです。自家増殖って、要するに収穫したものからまた種とか苗をとるってこと。これ、今までは許されてたんだけども。今回の改正では禁止になり、やりたいんだったら新たにまた種苗を購入するか許諾をとる(お金を払う)ことが必要になります。
目的としては、優良な登録品種が海外に持ちだされにくくなるように、らしいのですが。農家が自家増殖させたらそこから外国に流出するってことなのか? 自家増殖=海外に流出、の流れがよくわかりません。たくさんできたから横流ししちゃうぜ、イェー、みたいなことを防ぐ? いや、そんな農家さん、いないでしょうし。
企業が開発した品種を登録、というところまではわかります。それなら、その登録に対して海外への流出を明確に禁じて、もし誰かが勝手に持ち出したらどんな罰則を科すか、それを明確に規定すればいいのでは? そして、海外でも品種登録をし、育成者権の取得をすること。
農家が収穫のために種をとる、苗をとるっていうのは、農業の大原則のような気がします。私も自分で、家庭菜園をやっているからわかる。本当にこれ、とても原始的なサイクル。代を重ねることで、より一層、その土地に合う作物になったり。先祖から受け継いできた種の重み。
種とか苗って、本来、買うものじゃなく繋いでいくものだ。
私も、100年以上前から(おじいちゃんの代から)続くミエンドウを親から受け継ぎ、家庭菜園で今も大切に、毎年育てている。毎年おいしく実を食べた後、来年の種用のさやは収穫せず、残しておく。じっくり完熟させ、カラカラに乾燥するまで放っておいて、それから晴れた日にとりいれ、そのまま翌年の種として保管する。これを毎年繰り返して、つないでいる。この種はどこにでも売っているようなものではない。
自家増殖を禁止、というのは、実感としてものすごく不自然に感じるのです。植物って、自分たちの代だけで絶えたりしない。必ず次世代に、種や苗を残すものだから。それで、農業ってそれをつないでいくのが自然の姿なんだと思う。
新しい品種を開発する努力は大切だし、開発した人に権利があるのはわかるけど、その権利が自家増殖を禁止できるのかというと、それは違うと私は思う。農業は、工業製品や芸術作品の特許や著作権とはまた、性質が違うから。
日本の主要農作物を守ってきた種子法が2018年4月に廃止されて、その上、今回の種苗法改正で種苗会社の権利が強くなれば、外国の巨大企業も日本の農業に参入してくるだろう。今までは法の壁で、儲けが少ないから参入しなかったんだろうけど。
自家増殖禁止は登録品種に限ったもので、登録品種は10パーセントくらいだからいいだろうという論調もありますが、登録品種が今後増えることは確実ですよね。そのための法律改正だと思うので。民間が、どんどん参入してくる。外国の巨大企業が、次々と品種登録をして、寡占状態になったら? 種は、農業の生命そのもの。そこを握られたら、食の安定や安全は保障できないと思います。
また、興味深い裁判例があります。カナダの最高裁判所の判決です。
2004年5月、あのモンサント社がカナダの農場主を訴え、勝訴しました。モンサント社の調査員が、自社で特許を保有する遺伝子を持つ菜種を農場で発見し、種が盗用されたと訴えたのです。農場主は、風で飛ばされてきた種が知らないうちに交雑したと主張しましたが、認められませんでした。
カナダの話ですが、全然他人事に思えません。日本でも、この先登録品種じゃないからと、安心して自家増殖していたところで、「交雑してうちの登録品種の遺伝子があなたの作物に入ってる」と日本の農家さんが言われたら、どうしたらいいんでしょう?
これ、日本国民、全員に関わってくる話ですよね。日本の農業が衰退したら、本当に困ります。日本の農業は、これからもっと強く、農家さんが誇りをもって、よりよい種を、苗を、繋いでいける環境になってほしい。スーパーに並んでいる農作物、どれを選んでも安心、安全、適正価格で消費者の手に届くようになってほしい。
これからの時代、農業は日本の国の根幹をなす産業になると、思っています。私は、種苗法改正案に反対しています。