何故ミュージカルの『マリー・アントワネット』は評判がイマイチで、『エリザベート』は人気なんだろう? というのは、今でもすごく不思議に思ってます。
これは私の個人的な感想で、もちろん、他の方には他の方の意見があって当然だし、だからこそこの2作品の評価が分かれているのだろうと思いますが。私の感想としては2作品とも、基本的に登場人物に共感できないという点で、一緒なんですよね。
でも劇場の雰囲気は全然違います。私がエリザベートを初めて見たのは、2004年の帝劇でした。席はほぼ満席で、たまたま隣に座った女性が宝塚ファンで、熱心にいろいろ教えてくれたのを覚えてます。その方によると、エリザベートの東宝バージョン(宝塚ではないバージョン)は、当初はそんなに人気なかったとのこと。
「チケットとるのも、そんな苦労じゃなかったのよー。2階は空席もけっこうあったし。最後の一ヶ月だったかしらね、いきなり盛り上がって、連日満席になって、チケットとれなくなっちゃって」
その女性とは終演後も盛り上がり、いろいろお喋りをしました。
なにが女性客の心をつかんだんだろう?と思います。なにか、リピートせずにはいられないような魅力があったということですよね。初見の客が大挙して押しかけたわけではないのですから。
見た人がもう一度、また見たくなる、そういう魅力があったんだなあと思います。
私はといえば、2003年に山口ファンとなってから『エリザベート』を見るのをすごく楽しみにしていました。お姫様、死の帝王、そのシチュエーションだけで、ワクワクしたのです。それに、ポスターの山口トートのビジュアルが綺麗だったから。あの写真を見ただけで、心が躍りましたよ。期待が高まりました。
ただ、あのトート扮装写真は、山口ファンの中でも「あれはちょっと・・・」という人が結構いたみたいで、それも不思議でした。
私の感覚だと、すごく美しいと思うのですが。
その期待を、すでに2000年からのエリザベートを見た友人も、後押ししてくれました。「絶対気に入るって~」。
レ・ミゼラブルの、バルおじちゃんな山口さんしか知らなかったものですから、恋愛物っぽい作品(本当はそんな俗物的な話じゃないよ、と怒られそうですが)を見られるのだという期待は高まり、だからこそ初めて観劇した後の足取りは重かったです。
エリザベートに恋する山口トート、私は好きになれなかった。エリザベートに共感できなかったから、そんなエリザベートと恋におちるトートにも、共感できなかった。冷めた目で2人を見ている自分がいました。
「あ。そうなの。ふーん。まあ、いいんじゃないですか?お似合いだと思いますよ」みたいな投げやり感(^^;
こうすればもっと萌えるのになあ、とは前にも書いたことがありますが、よくよく考えてみれば実在の人物を描く以上、ある程度の制限があるのは仕方のないことですね。だって、もし日本の歴史上の人物をもとに描かれた芝居が海外で上演されて、それが「この方がウケがいいから」という理由で史実とは違うキャラに描かれていたら困りますもん。それなら、「その人の名前を使うな」という話になりますよね。モデルとして名前を出す以上は、できるだけ史実に忠実に描くのは当然のことで、そこには一定の縛りが出てくる。
それにしても、舞台『エリザベート』の人気はすごいです。去年、日生劇場で上演されたときには、自分が行きたい日のチケットがとれませんでした。その日ならどこの席でもいいやーと思ったのですが。完売、たった一つの空席すらない、ということはすごいことだと思います。役者さんもやりがいあるでしょうね。
なんのかんの言っても、山口さんが出てる公演には足が向いてしまう自分がいます。エリザベートでも、マリー・アントワネットでも、それは同じです。あの声が、歌が、聴きたくなるのです。そして聴いてしまうと、その出演舞台がもっとこうならいいのに、ああならいいのに、と脚本や演出に一言いいたくなってしまうのです。上を望んだらきりがない。でも少しでもいい作品に出て輝いている山口さんを見ていたい、と思うファン魂であります。
マリー・アントワネットの舞台は、エリザベートに比べて客席の反応が薄い感じがしますね。拍手もそうだし、私が舞台の熱気(評判)を一番感じるのは、女子トイレです。並んでいるとき、周りから聞こえてくる舞台の評判は、率直で飾りがありません。幕間、見終えたばかりの一幕の感想を、少し声高に興奮した様子で話す女性客の言葉に、その舞台の一般的な評価を知ることができます。
MA(マリー・アントワネット)は、観客の反応が鈍いような感じがあります。みんな黙って、トイレの列に並んでいたような。それと、劇中、見せ場の後の、ウワーっという拍手の勢いが弱い。
もし私が演出の栗山さんだったら、納得いかないと思う。客のウケが悪いのは、自分と客の感性の違いとしても、だったら何故エリザベートは? そう考えたら、客の反応を理不尽に感じてしまうと思います。不思議です。栗山さんの感性と、小池さんの感性と、なにかが違う? それはいったい、何なんだろう。
私が今まで見た中で、一番感動したミュージカル。単純に、楽しいと思い何度でも見たいと望んだミュージカル、それは『ダンス・オブ・ヴァンパイア』です。これは、本当に私の感性にぴったり合った舞台でした。
たとえ世間の評判が最悪で、もし空席だらけだったとしても、私は通い続けたでしょう。極端な話、あの帝国劇場に観客が自分以外誰もいなかったとしても、私は嬉々として座席に座り、音楽とお芝居に酔いしれたと思います。
実際には、人気のあったミュージカルでしたが。
世間の評判と自分の感性。一致するときも、違うときもありますね。『エリザベート』と『マリー・アントワネット』の評判の違いを聞くたびに、そんなことを思います。