『eclipse』Stephenie Meyer 著 を読みました。以下、感想を書いていますが、ネタバレを含んでおりますので、未読の方はご注意ください。
第1巻『new moon』や、第2巻『twilight』もそうだったんですが、後半の盛り上がりがすごかったです。主人公のベラが、吸血鬼と人狼の板ばさみになる状況が何度も繰り返されて、そのたびに、まるで我がことのように考えこんでしまいました。いったいどうすればよかったんだろう。なにが正解なんだろうって。
エドワードは大人ですね。さすが、百年以上生きている永遠の17歳。
ベラのピンチには絶対駆けつけてくれるし、ベラのためなら自分の感情を押し殺してでも彼女の望みを叶えようとするし。それでいて、結婚観は生真面目すぎて、ベラの情熱に流されることはないという。
正統派王子様ですね~。いやー、恵まれて育った王子様にはない行動力や勇気がある分、王子様以上の存在なのかも。そりゃ、ベラも惚れますね。
この二人の関係を見ていると、恋愛って不思議なものだなあと思います。たしかにエドワードは条件だけみても素敵な男性なんですけど、たぶんベラは、エドワードがエドワードだったから惹かれたんだろうなあって。読みすすめるほどに、それを感じるのです。
人狼族の言葉を借りるなら、imprint (刻印)の相手だということでしょうか。ジェイコブはそんなimprint についてこう説明しています。
>It’s not like love at first sight, really.
>It’s more like…gravity moves.
>When you see her, suddenly it’s not the earth holding you here anymore.
>She does.
>そうだな、一目ぼれなんていうもんじゃないんだよ。
>重力の移動、に近いかも。
>彼女を見た瞬間、地球の重力じゃなく、
>彼女にとらわれてしまうんだよ。
すごい表現ですよね。重力の中心が地球からその人に変わってしまう瞬間。全身の血が逆流する音が聞こえそうです。眩暈をおこすくらいの激しさ。それ以降は、なにもかもが違ってみえるでしょうね。
でもここらへんのジェイコブの語りも、実は含みをもったものじゃないかなーと、勝手に思っております。ジェイコブはベラに、一生懸命imprintの説明をしつつ、内心「わかってくれよー。まさにこれって僕が君に抱いている気持ちなんだけど」なんて、声にならない言葉で、訴えていたんじゃないかと。
しかしその後の会話で、ベラはあっさりと、ジェイコブにこんなセリフを言っちゃいます。
「あなたがそのimprint の相手に出会うのは、いつだと思う?」
いやー、ジェイコブが好きなのはベラなのですし。察してくださいって感じですね。ジェイコブの心の声は、「今目の前にいる君なんだよーー!!」と悲鳴をあげていたに違いありません。
ベラは少し鈍いというか、天然で残酷なところがあるので、エドワードとジェイコブを振り回しますね。読んでいて、オイオイ・・・(無言)・・・となる場面がいくつかありました。たとえばキャンプ地でエドワードと一夜を過ごす場面。
6月というのに季節外れの寒さ。寝袋の中で凍えているベラに、エドワードは為す術がありません。エドワードが近付けばもっと凍えてしまうから、彼は距離をおくことくらいしかできなくて。そこに颯爽と登場するジェイコブ。エドワードの気持ちなどまるで無視、さっさとベラの寝袋にすべりこみます。抗議するエドワードに、「(凍傷で)指をなくしたら、ベラはきっとお前さんに感謝するだろうね」とピシャリ。
エドワードが気の毒でした。自分の運命に苦い思いを抱いている彼なのに。自分にはない体温(温かさ)が、ジェイコブにはある。そのことを、こんなふうにみせつけることないじゃないかーと、最初はジェイコブを責めたい気持ちになったものの、いやいやこれって、元はといえばベラがはっきりしないせいだよなと。
ジェイコブの立場になってみれば、今までのベラの態度は非常に微妙なもので。エドワードが一番、エドワードを愛してるってことは確かに宣言していますけども、かといってベラは、ジェイコブを完全に拒んでいるわけではなく。気のある素振り(おそらくベラは親友として・・・と主張するでしょうが)を示しているから、ジェイコブとしても気持ちは揺れるわけで。
以前に変なメモというか、手紙みたいのを渡したのは人としてどうかなーと思いました。気持ちをふっきろうとしている相手に対して、惨いです。ジェイコブの手書きの返事を見ると、線を引いて消した文字に本音が表れているのがよくわかります。
消された文章で、まあ要するにジェイコブが何を言いたかったかというと、
>親経由で手紙寄こすなんて、小学生かよ!!
>俺が話をしたいと思ってたら、電話に出てるから。
>君は、俺じゃなく奴を選んだんだ。
>両方ってそりゃ無理だって。
>あんな奴のどこが・・・
>友達でいましょうって、そりゃ不可能。
>これ以上君のことを思うとつらいから、もう手紙は書かないで。
以上が、恐らく彼の本音。でもジェイコブはそんな思いを全部線で消した。
ベラに宛てた言葉は、こんな優しいもので。
>Year, I miss you, too. A lot.
>Doesn’t change anything. Sorry.
>そうだね、僕も君に会えなくて寂しいよ、とても。
>僕達の関係はなにも変わらない。ごめんね。
ジェイコブ、いい人だ・・・というか、気の毒だ(^^;
すっごく好きになった相手で、でもその人には恋人がいるんだからと。諦めよう、忘れようと必死になっているのに、離れたら急にその人がコンタクトとりたがって、親しい関係(でも恋人ではない。あくまで友達どまり)でいてくれと頼んでくるなんて。
追えば逃げて、逃げれば追う~♪ですかね。
頭の中では、CCBの曲が鳴り響いておりました。
しかしそんなジェイコブが凍えたベラの体を温めるのを、間近で見守らなくてはならないエドワードもかなーり、きつい立場だと思われます。私がエドワードなら、もういたたまれなくてその場を立ち去りたい。でも、自分にはベラを守るという責任があるわけで、もうこれは、引き裂かれるような思いでしょうね。どうしてこんなつらい光景を、目撃しなければならないの、という。
エドワードは、よかれと思ってしたこととはいえ、かつてベラを置き去りにしたという負い目があるので。こうした苦難にも耐え続けるんでしょうなあ。もう、けなげすぎて泣けます。
長くなりましたので、続きは後日。