『アッコちゃんの時代』林真理子 著 を読みました。以下、感想を書いていますが、ネタばれ含んでおりますので、未読の方はご注意ください。
前から気になっていた本だったのですが、やっと読めました。小説ではなく、実話を元に描かれています。
バブル華やかなりし折。地上げの帝王の愛人の座を、やり手の銀座ママから奪った普通の女子大生。アッコちゃん。
もうここからして、すごいです。
バブルを背景に巨万の富を得た男。彼はなぜ、銀座のママではなく普通の女子大生を選んだのか。
魔性? 美貌? とにかく厚子という女性はいったいどんな人なのか、そこにどんな秘密があるんだろうと、興味津々でページをめくっていきました。
厚子のすごいところ。それは、地上げの帝王と別れた後、有名女優と結婚していたこれまた有名なレストランオーナーと付き合い始め、なんと略奪婚してしまうのです。
1度目はともかく、2度もすごい男性を虜にしてしまったのは、偶然ではないなにかがあるのでは?と思いますよね。
ただ、私が本を読み終えて思ったのは、人があれこれ言うほどには、本人は幸せではなかったんじゃないかという、ほろ苦さでした。
本の最後の方に、こんな文章があります。
>が、それはとても楽しい。
>選ばれた者だけ味わえる楽しい時代を過ごす。
>ふつうの人間よりも、はるかに濃密な時代をすごしていく。
これは、厚子の心の声、として描写されているのですが。
私は、著者である林真理子さんの感想なんだろうなあと思いました。林さんは、厚子をうらやましいと感じたんでしょう。
たしかに、まるでシンデレラのような、夢のようなストーリーではあります。ただ、私は思うのです。
もしこの二人のことを、厚子さんが本当に好きだったなら、幸せだったろうになあ、と。
そこに尽きるんじゃないか、と思ってしまいました。
どれだけ物質的に満たされても、いつか飽きる日が来る。
想像してみると、わかるのです。お姫様のようななんでもありの待遇はそりゃあ心地良いでしょうが、ふっと飽きる瞬間は、確実にやってくるでしょう。
そのときの虚しさ、というものは。
結局、厚子は流されただけのような気がしました。世間が騒ぐのは勝手だけども、本人にしてみたら迷惑な話で、自分が望んで動いた結末ではないのだから。
厚子の人生は波乱万丈です。
本の中では、略奪婚した夫といつしか別居し、お互いに別の恋人を持ちながら、籍だけはそのままにしているというところで終わっていましたが。
気になって、その後の厚子についていくつかの記事を読んだところ。
結局、略奪婚した夫とは離婚したそうです。
いえ、ここまでは予想通りでした。心が離れてしまってなお、一緒にいる意味は見いだせないですし、時間の問題かなと思っていたので。
ただ、ここからが凄い。
別居中に、籍はそのままで、夫ではない恋人との間の子供を出産していたのです。
いくらなんでも、それはあまりにも旦那さんに失礼なのでは・・と思ってしまいました。夫は夫で、遊んでいたかもしれないですが、それにしても夫でない人との間に子供を、というのはあまりにも。
ご夫婦はともかくとしても、子供の立場からしたら、とてもむごいことだと思います。
そして、離婚後、結局はその恋人とも別れてしまい、ひとりになったそうです。この恋人との間には、お子さんが二人ということで、この方のことは本当に好きだったんだろうなあと想像しました。
そして生活のため、銀座でホステスとなり、あっという間にナンバーワンに。
やはり天性の才能があったのでしょうか。
初めてホステスをしたとのことですが、それでナンバーワンて、これはもう努力とかいう以前に、天職なのかもと。
ただ、ホステスの仕事も一年経たないうちにやめ、その後は昼間の仕事に就く予定ということでした。
アッコちゃんの時代。その生き方をうらやましく思うかどうか。
一つわかったのは、たぶん林真理子さんは、そうした生き方に憧れがあったんだろうなあと。そう思いました。