映画「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」を見ました。以下、感想を書いていますが、ネタバレしていますので、未見の方はご注意ください。
もうこの映画、最初のシーンから全力で引き込まれてしまった。
イイ(*^-^*)。主人公の福士蒼汰さん演じる南山高寿(たかとし)が、もっさりしてて、あか抜けない感じでとてもイイ。その純朴な青年が恋に落ちる瞬間が、すごくイイ。一目惚れを映像化した作品の中で、一番だと思う。目が離せなくなっちゃって、戸惑って、困って、ドキドキしたまま彼女をみつめる、心臓の鼓動の音まで聞こえてきそうな演出。
そして高寿の一目惚れの相手、福寿愛美(えみ)役の 小松菜奈さんがこれまたイイ!(^^)! コートを着てるけど、電車の窓から入る陽射しはもう春なのよ。扉の横で立って、本を読む姿がハッとするほど綺麗で、可愛くて、吸いこまれる。もう高寿の気持ちがそのまんま、自分の気持ちになる。愛美ちゃんの姿に、吸いこまれちゃうのよね、魂ごと。
一目惚れです、と初対面の相手に声をかけるなんて、冷静に考えたらできないことだけど、そこが若さ。若さは許される。(^^)高寿の不器用な感じも、いいのよね。もっとシャレた言葉や、上手い言い方はあったかもしれないけどさ。そうじゃない感じがいいのよ。もっさりしてるところがとてもいいのです。
電話番号じゃなくメアドを聞くところも奥ゆかしくて。メアドなら、電話より心理的に遠いもんね。プライベートにずかずか踏み込む感じがない。高寿が、愛美に携帯電話を持ってないと言われて、婉曲に断られたと思ってじわじわと落ち込む感じも微笑ましかった。若い二人の出会いが、可愛いなあ。
初心な高寿に、恋のあれこれを指南する親友役を、東出昌大さんが演じているのも、あまりにピッタリで笑ってしまいました。東出さん、いろいろあった役者さんですけど、実際女性には慣れてるんだろうなあと思いますし。演技というか、素かな?なんて思いながら見てました。
高寿が愛美の秘密を知ったとき、自分達の運命に気付いたとき、その苦しさが一度は二人の関係を壊しかけるけど、すべてを知っている愛美はただ、時間が流れるのを待つしかなくて。逆方向に時間が流れるカップル。いったいどちらがマシなのだろう、楽なのだろう、と考えてしまいました。
結論。やはり、高寿の方が楽だろうな。互いに20歳で会えるのがたった30日間なら。だんだん関係が深まる方が嬉しいし、自然だから。初日がピークで、後はどんどん他人行儀に、遠ざかっていくのはせつなすぎる。
1日が終わるごとに、高寿との思い出が生まれるごとに、泣く愛美の気持ちを思うと気の毒で。どんどん遠ざかるんだもんなあ。まだ高寿の立場の方がましだと思う。途中で真実を知らされたって、まだ先があるもん。一緒に共有できる思いも、時間もさ。愛美は独りで、それを抱えなきゃいけないから。
20歳の30日の、大切さを思いました。25歳と15歳は、男女がどちらであれ、恋人にはなれない。その点、同い年で20歳って、いいですね。夢いっぱい、希望がいっぱい。
福士蒼汰さんと小松菜奈は美男美女ですが、画面から伝わるのは、本当に平凡な、どこにでもいそうな若いカップル。そこがいいんですよ。特別じゃなくて、誰にでもあるはずの、若い日の光景だから。二人の気持ちをまるで自分のことのように感じられる。二人が嬉しそうにしているときはこっちまで嬉しくなるし。悲しんでいるときには自分のことのように心が痛かった。
「ヤバイ、抱きしめたい」
「抱きしめたらいいんじゃないかな。」
この辺の流れも、キュンキュンしますね(*´ω`*)
性的同意書がどうこう言われるこの頃ですけど。性的同意書なんか、意味がない。セクハラや強制がダメなだけで、恋人同士の自然な流れって、古来からあるわけで。セクハラや強制をなくすために性的同意書は全く無意味というか、むしろ害悪では?この頃の若者たち、特に若い男性は、臆病にならざるをえなくて気の毒すぎる。
今の法律では、後で女の子が心変わりをしたら、アウトになってしまうから。「本当は嫌だった」「本当は同意していなかった」女性のその一言だけで、罪を作り上げるのはおかしい。そこにセクハラや強制性があったのかどうかなんて、状況を総合的に、客観的に判断するしかないのにね。
この映画の、二人の初めての一夜を見ながら、そんなことを考えていました。二人の時間が、本当に素敵だなあと思いながら。お互いをとても大切に、拒絶されることを恐れながら、二人がおずおずと近付いていく。
映画のちょうど半分ずつで、「知らない高寿」「知っている高寿」が描かれるのが興味深いです。最後にネタバレして派手に終わり、とかいうのではなく。知ってからの彼が何を考え、どう行動し、最終的にどんな自分を選ぶのか、後半が丁寧に描かれているから。
大好きな人と、どんどん関係が深まっていく。大好きな人と、どんどん関係が離れていく。どっちがつらいのか、それがわかったときに高寿はふっきれて、乗り越えた。不思議なタイトルの意味が、この映画の意味が、わかったときに、ああー、そういうことだたのかと思う。タイトル上手だなあ。
昔、私は映画化されるより前に、原作の小説を読んだ。面白いタイトルだから読んでみただけで、アイデアは面白いと思ったけれど、そんなに感動はなかった。だからこのブログにも、本の感想は書いていない。だけど今日見た映画は、原作の小説を超えてはるかによかった。それは俳優がはまり役だったことと、映画で映像で見る二人のデートが、とっても微笑ましかったから。
伏見稲荷や、鴨川や、もちろん初めてのピザや、事前準備の高寿の緊張っぷりも、笑えた。本人が素で、台本なしで出てるんじゃないかと思える、東出くんの親友っぷりも自然でよかった。
とてもロマンチックな映画だけど、でも人生の半ばを過ぎた私は思った。20歳の30日だから盛り上がるけれど、この先ずっと一緒に暮らせば、もしかしたら別れたかもしれないね(^^;家族になって、最後まで仲良く暮らすのか、それとも長い時間を一緒に過ごしたら、案外相手の嫌な部分が見えて、気が合わない部分に気付いて別れてしまったか。それは誰にもわからない。
高寿にとっての最後の日。愛美を絵に描く高寿が、かつてないほど自信にあふれ、愛美との関係性が逆転していることが面白い。愛美が好きすぎていつも、愛美を気遣っていた高寿が、なぜか上から目線みたいで(笑)愛美は初日だから、すべてを知ってる俺余裕、ということなのかな。
15歳の愛美を演じた、清原 果耶(きよはら かや)さんも、物語に深みを与えてましたね。映画の中で出演時間は短いけれど、15歳の愛美がどれだけ高寿に惹かれたのか、20歳の再会をどれだけ楽しみに待ったのか、わかる映像でした。15歳の愛美が会ういろいろあった末の25歳の高寿は、20歳の時より、ずっと大人で。そんな高寿を好きになってしまう、ちょっと寂しそうな、影のある清原 果耶さんの表情がよかったです。
35歳以降の二人は、どんな人生をたどったのかな? 案外、愛美は高寿のことを大切な思い出としたまま、別の人と別の人生を送っていそう。高寿の方が、愛美を引きずってずっと独身のまま過ごしてそう。エンディングに流れるback numberの「ハッピーエンド」が、映画にぴったりでした。20歳で大好きな人と結ばれて、最高の30日間を過ごし、35歳で別れる運命は、ハッピーエンドでしょうか?
愛くるしい愛美の表情も、優しい高寿の表情も、街の風景も光の加減も、すべてが美しい映画でした。
青いまま枯れていく
あなたを好きなままで消えてゆく
backnumber 「ハッピーエンド」
この曲が流れるラスト、聴き入ってしまいました。