『エルの楽園』PVを見ました。スクリーミング・マッド・ジョージさんが演出されてます。
ああ~好きだこの世界観。と、何度も観直してしまいました。
『エルの天秤』という曲に続くお話だと思うのですけれども。『エルの天秤』で、男は病弱な娘のために悪事に手を染め金を稼ぎ、恨みをかって刺し殺されてしまいます。
とはいえ、はっきりした答えなどない、曲同士の繋がりですから、たぶん・・・という想像でしかないのですが。
曲の最初に、じまんぐさんの語りが入ります。郷愁を誘うようなレトロなメロディ。
矛盾する二つの宣言は、どういう意味なんだろう?
たぶんこの男というのは、『エルの肖像』で、エリスという肖像画の少女に恋をした少年の成長した姿で、後に仮面の男ABYSSとして、哀れな救われない魂を呼び集めながら永遠にパレードを続ける男と同一人物なんだろうけれど・・・。
想像するに、男の娘は病弱で、その薬代を稼ぐために男は必死だったようです。
刺されて、それでも必死に娘の家へ帰ろうとする姿が鮮やかに浮かび上がります。曲が、一つの物語として成立している。
最初の一節だけで、Sound Horizonの世界にどっぷりはまってしまいます。赤い血の跡を、独特な表現で描き出すセンスに脱帽です。
もうね、男にとっては自分の娘を助けたいという一心だけが体を動かしていて、だから死に瀕したとき、他のことなんて全部忘れちゃったんだと思う。ただ手に握り締めたコインの感覚だけが、これで助けられるという満足感につながり、笑ってるの。幸福感に満たされている。
傍から見たら異常な状況でも、男の心中には幸せな情景しか描かれていない。
この金貨があれば、医者にも診せられる。薬も買える。誕生日のプレゼントだって、なんでも好きなものが買ってやれる。
喜ぶ娘の笑顔を想像して、それが嬉しくて、だんだん思考に靄がかかって。
PVの中では、エルと男が向き合う場面が描かれてます。
エルを演じるあらまりさんと、男を演じるREVOさんが、交互に映し出されるシーンが好きです。Revoさんの目から流れ落ちる涙。無邪気に、問いかけるあらまりさん・・・。
エルは基本的に人形なのですが、中世の村娘っぽいコスチュームのあらまりさんに切り替わるところがまた、素敵なのです。
濃い目の化粧。上からのライティング。光と影のグラデーション。疑うことを知らない、楽園を信じて好奇心に目をキラキラさせてる娘と、現実を知る父親の涙。
2005年のライブのときには、この男を演じたのはじまんぐさんでしたが。PVではRevoさんが演じておりまして、それは大正解だと思いました。PVに関しては、Revoさんがやらなくては、この映像の重みが出せない。
実際、あらまりさんはこの曲のCDを最後にRevoさんの元を離れ、Sound Horizonを脱退したわけで。別離の痛みを思うと、このPVに見るRevoさんの涙が、一層胸に迫ります。もちろん、これを撮影した時点では、誰もそんな未来など予想していなかったと思いますが。
才能に惚れる、才能に触発される。という意味で。
Revoさんとあらまりさんはお互いに強く影響し合ったのだと思います。この2人がいたから、楽園幻想物語組曲の構想が生まれたのだと思うし。
じまんぐさんが男を演じたら、それは全く違う映像になっていたでしょう。だからこそ、スクリーミング・マッド・ジョージさんは偉大だなあ、と思うのです。男の役に、Revoさんをもってきたから。Revoさんの目の奥にある愛情、そのせつなさに心を打たれました。
楽園を願い、楽園を夢想するのは人の常。
いつかどこかにあるかもしれない楽園のこと。
山のあなた・・・ですね。