別冊花とゆめ5月号『ガラスの仮面』を読みました。以下、感想を書いていますが、ネタバレ含んでおりますので、未読の方はご注意ください。
感想を書くために、本誌から引用した台詞などは>で表してあります。
私が勝手に想像した台詞は、☆で表してあります。
混同しないように、記号分けしました。
紫のバラのひとがあなただってこと、知ってるんだから!!と、鼻息も荒く叫んだシオリーですが、これでも相当自制してたんだろうなあ。
本来であれば、おそらく下記のような暴言になったと思います。
☆11も年の離れた女優に匿名でバラを贈り続け、妙な愛着を持つなんてみっともなさすぎます!!
☆恥ずかしくございませんの?
☆ご自分の社会的立場を、もっとお考えになったらどう?
ああ、もしもこんなことをストレートに言われていたら。マヤに憎まれていると思いこんでいる以前の速水さんであったなら。瞬間固まって・・・・投げつけられた言葉の一つ一つに完全同意して、幾度も心中で復唱して、まるで抜け殻のような弱気な笑みを見せたのだろうか、と想像してしまいます。
言葉を発した本人であるシオリーですら、思わず罪悪感を感じずにはいられないくらいの、ずたずたに傷ついた虚ろな目をして・・・。
まあ、想像は広げると果てしないのでその辺にしておいて。
今月号の速水さんVS紫織さん対決を見て一番感じたことは。
速水さん、根本的に戦略を間違えてると思います。
シオリー、女性なんですよね。それもかなり、女性っぽい女性なわけで。その人相手に、理路整然と理屈を説いても無駄なんです。
たぶんシオリー、論理じゃなくて感情で動いてるから。
☆なんだかわからないけど真澄さまが好き。
☆その真澄さまがマヤを愛してるみたいだから、マヤが憎い。
☆マヤがいなければ、真澄さまは紫織を愛してくれる。
シオリーの考えてることは、要するに上記のようなことで。なのに真正面から
>なぜあんなことをしたんですか? 紫織さん
なんて聞いちゃ駄目です。追い詰めるだけだから。しかも、「あんなこと」って部分にたーっぷりの皮肉をこめて。その意味に、シオリーちゃんと気付きますよ。気付いて動揺しますよ。
感情で生きてる人に、論理で対抗しても激情に火を注ぐだけなんですよね。理屈じゃなくて、上手にあやしてあげなくちゃ。
まあ、そこに正攻法でどーんとぶつかるところが、速水さんらしいといえば速水さんらしい。それがマヤへの誠意でもあり、シオリーへの誠意でもあると心得ているのかな。ビジネスだったらもう少しひねったやり方、したかもしれない。シオリー相手でマヤが絡んでるからこそ、真正面からいくことが速水さんなりの誠実さだったのかもしれないけど。
もしこれが、速水さんみたいに生きてきた人相手の交渉だったら、それはもう一番無駄がなく、効果的な方法だったと思いますね。
もしも速水さんがシオリーの立場だったら、ですよ。
今回のように、あなたのやったことは許されないことでその手口は全部ばれているし、あなたが切り札と思っている紫のバラのひとの正体は、なんの攻撃力も持ちませんよって淡々と言われたら、あっさり引っ込むでしょうね。逆転のチャンスが、一パーセントもないことを知って。
事実を冷静に判断すれば、そうすることが自分にとって一番傷つかないと、当然そういう結論に達して身を引くでしょう。それが速水さん。だから、シオリーに対して、「自分が逆の立場だったらこれが一番効果的」な最後通牒つきつけたんでしょうけど、速水さん、シオリーがすごく女性らしい女性ってことを忘れてる・・・・。
正しいことを理路整然と言う、、それが逆に、怒りに火を注ぐっていうこともあるわけで。
このままシオリーが、
☆申し訳ありませんでした
☆わたくしが間違っておりました。マヤさんにあんなひどいことをするなんて、それを真澄さまに知られるなんて、紫織は恥ずかしい・・・
☆婚約は解消です。さようなら・・・ヨヨヨ
なんて返してくれると思ったのでしょうか?
波乱の予感です。
速水さんに対して、シオリーは今まで、清楚なお嬢様で通してきたわけで。その仮面を、無理やりはがされたらどうなるのか?
とりつくろう体面があったからこその、行動の制限なわけで。その箍が外れれば、きっとシオリーはもっと過激な行動に出る。
こんなこと言ったらドラマチックではないし盛り上がらないけど。本当は速水さん、全力で「嫌われる男」を演じればよかったんですよね。恥をしのんで。なりふり構わず。それが一番、円満に婚約解消できる道だった。
好かれることより、嫌われることの方が簡単です。
ある一点、「百年の恋も冷める瞬間」さえ掴めばいい。その一点さえ掴めたら、あとは勝手に、シオリーの気持ちが冷めていく。そしたら追いかければいい。
そうなれば追いかければ追いかけるほど、シオリーはゾッとして、自ら婚約解消を申し出るはず。
そのときこそ、速水さんはつぶやいてみせればいいんですよ。
☆残念です。ぼくはあなたと結婚したかったのに・・・。
とね。駄目押しです。そうすれば、間違ってもシオリーは速水さんを恨まない。マヤを憎まない。嫌いな人間と結婚しなくてすんだ幸運を、しみじみとかみしめるだけ。
☆マヤさんも気の毒な人ね
☆真澄さまの裏の顔を知っているのかしら。わたくしにはとても、あんな人と添い遂げるなんて無理。
☆でももしかしたら、マヤさんのような人にはお似合いなのかもしれないわね(微笑)
上記のようなことさえ、思うかもしれませんよ。そうなれば速水さんとマヤの結婚には、なんの障害もありません。時間をおく必要もなく、すぐにでも結婚できます。そしてその結婚に、シオリーは傷つかないし、今さら気持ちが変わったりもしない。
まあ、そうなると速水さんとマヤはめでたく結ばれて、マヤが幸福であれば、引き裂かれる恋人同士の悲哀など想像の産物でしかなくなり。彼女が紅天女を演じても、至高の存在を演じたという域にまでは、達することができないのかもしれません。
だからこそのシオリーなのだと、私は思っています。彼女がきっと重要なカギになるはず。
紫織さんはきっと、引きさがらないでしょう。