今まで書いてきたレビューなどをまとめてHPを作ろうと思い、サイトを作成中です。
HTMLとCSS、勉強してますが、奥深い~。あんまり凝ったつくりではなく、ごくごくシンプルなものにしようとは思ってますが、まだもう少し時間がかかりそうです。
このブログも引越し予定でして、過去の記事を少し整理しました。
ちゃんとサイトが完成するまでは、あんまり新しい記事を書いたりするのやめようと思ったのですが、ときどき書きたいネタがわいてくる~のです(^^;
ついさっき、衝動的に書き上げたのが、『別冊花とゆめ』2011年6月号連載の、『ガラスの仮面』の一場面。そこからいろいろ想像がふくらんで、文章にしてしまいました。
あのときの速水さん、なにを思っていたのかなあって。以下に載せるのは、あくまでも私の勝手な想像であり、パロディです。なので、そういうのが好きな方だけ、読んでください。
その瞬間の景色は、鮮やかで、しかし奇妙に他人事のようで、現実感がなかった。
紫織さんが倒れていた。薄い色の大理石の床を、血で染めて。流れた血の量で、彼女が本気であると知った。紫織さんは意識のないままそこに倒れて、微動だにしなかったが、この現場そのものが、主張だった。
——わたくしは、あなたと結婚するのです。そうでないなら、生きられない————–
もし、面と向かって言われたなら。なにを馬鹿なことを、と一笑に付しただろう。だがこの場では、現実の自分は何一つ身動きがとれず。呆けたようにその場に立ち尽くして、ただただ、倒れ伏した婚約者を、みつめていた。
当たり前だ。馬鹿なことを、と笑い飛ばし、それでもと強情を張るなら叱り飛ばしたい相手は今、目の前で崩れ落ち、意識をなくして倒れている。おれの話など、この人は聞かない。届くはずもない。
それでも、ついさきほどまでは僅かな期待をかけていたのだ。
心をこめて話せば、わかってもらえるかもしれないと。
たとえ命を賭けても、手に入らないものはあるのだと彼女は知らないのだ。これが彼女の人生か、と、おれは思った。
小さな頃から、思い通りにならないことなどなかったのだろう。
頭だけがくるくるとせわしく回転していた。考えていた。これからの動きを。
本能的な嫌悪感が、この光景を見た瞬間から全身を駆け巡っていた。こんな真似をする人だとは、思っていなかった。この人とは暮らせない。この人とは・・・無理だ。だが。
おれはこの人と結婚することになるだろう。
マヤ。一瞬、頭をかすめた愛しい姿を、意志の力で振り払った。ここで思うことそのものが、彼女を侮辱するような気がした。マヤを巻き込むようなことだけは、断じて避けなければならない。その体に、指一本触れさせるようなことなど、あってはならない。
今がどれほど大切な時期か。スキャンダルはマヤから全てを奪うだろう。
さよならを・・・それすら言えない。
裏切られたと、おれを恨むか。
約束を違えたと、泣いて怒るか。
それでいい。憎んで憎んで、忘れてしまえ。憎しみは力だ。おれが望んだきみとの未来は、かなうことがなかったが、きみはきっとこの先、また別の夢を描くだろう。
誰かが紫織さんに駆け寄り、止血の処置を始めた。
それでもおれは動けない。
救急車を呼びました、という声。鷹宮家にも連絡を、と指示する声。ざわめきが広がっていく。夢の中にいるようで、それは耳に届きながらもどこか、霞がかかっている。
婚約者であり、目の前の事態を招いた張本人であるおれは、置物のように固まってその場に存在していた。自分が透明な何かになって、まるで誰の目にも入っていないのではないかと、そんな気さえした。
本当にそうであってくれればいいのだが。もはや、おれには自分の存在意義を、見出すことができない。
・・・・・ いや、嘘だな。
たった一つだけ。おれには許された価値が、ある。ただひとつ、おれに残された価値は・・・・・・・。
紫織さん。お望み通り、差し上げますよ。欲しかったんでしょう? 理解などできないし、するつもりもありませんが。
よかったですね。嬉しいですか? その傷は痛むかもしれないが、あなたは死なない。本気だったのはわかりますが、こんな場所を選ぶところがあなたらしい。
この身と引き換えに、マヤが守れるのなら、もうなにも要りませんよ。
ええ、平気です。
ぼくは平気ですよ。あなたの、お望み通りに。
血の気を失い、陶器のように白い速水の横顔に、いつしかうっすらと微笑が浮かんでいる。
この場にそぐわない、背筋が凍るような頬笑みに、周囲のスタッフは、尋常ではないものを感じて息を呑んだ。結婚式を間近に控えた恋人同士のトラブルはよくある話だが、自殺未遂とは。
まして、それを目にして笑う婚約者など。想像を超えている。
この人はどこか、おかしいのではないか。狂っているのではないか。心配する素振りもみせず、血を流して倒れた婚約者を前に、突っ立ったままで笑っている。近付こうとさえしない。
どう声をかけたらよいのかわからず。誰も速水には触れなかった。不気味さを感じ、遠巻きにするばかりだった。
あのときの『別冊花とゆめ』を読んで、私の脳内に広がった光景が上記のような感じだったんですけど(^^;
こういうこと書いちゃうのは、私が冷たいのかな~と、思ったりもしました。紫織さんに対して、もっと速水さんは優しくあるべきなのか?と自問してみたり。 普通なら、まあ愛情は持てないにせよ、こんなふうに怪我した時点で、ひとまずその場は駆け寄り、体を心配して、救急車の到着をイライラして待つ・・・みたいなのが、通常なのかなあ。
でも、私はあのとき、速水さんの体の表面を電気のように走った嫌悪感、リアルに想像しちゃったんですよね・・・・。
こんな真似するのかっていう、紫織さんへの蔑みみたいなものを。
ああ、もちろん速水さんは、紫織さんのことを気の毒に思ってないわけじゃないし、それまでの自分の行動が、紫織さんに期待を抱かせるようなものであったことを反省もしてるだろうし。もちろん、罪悪感も感じていると思います。
ただ、この、蔑みめいた気持ちが自然に、どうしようもなく湧いてくるっていうのも、あるんじゃないかな~と。ピリピリっと体中に走る、電気みたいな嫌悪感。
あの場面を見て。それは速水さんには衝撃の光景だっただろうし、血の量に本気度も感じただろうし、だけど。同時に、どこか冷静に判断もしてたんじゃないかな。死には至らないと。全体を把握して。
そして、自動的に出てしまう結論。
認めたくなくても。今までの速水さんがずっとそうしてきたように、頭は勝手に回転して、感情抜きに冷静な結論をたたき出してしまっただろうなあ。
「自分は紫織さんと結婚せざるをえないのだ」と。
そうなんですよ。もう一択しかない。
だって、紅天女の試演を控えた、大事な時期ですよ。ここでしくじったら、マヤを守れない。
それにね。紫織さん、あきらめてくれるなら、あんな行動には出なかった。あれは、ある意味、積極的な宣戦布告でもあるのだと。今はまだ、その攻撃対象は、紫織さん自身に向いていますけどね。
速水さんがあくまで、マヤと一緒になろうとするなら。第二弾、第三弾の攻撃はくるだろうと予想します。その矛先が、速水さんになるかマヤになるか、あるいはその両方になるか。
そういうこと。あの状況下で一瞬にして、速水さんは理解してしまったのではないかと。その鋭い分析力こそが、速水さんの強みであり、弱さでもある。
いっそなにも気付かない、そこまで考えの及ばない人であったなら。
あくまで自分の考えを主張し、今後もなにがあろうと、婚約解消の意志を曲げないというスタンスを保持することもできたでしょうが。
速水さん、きっとわかっちゃったから。
わかっちゃったらもう、そうするしかないんじゃないかと。マヤを守るために、マヤを諦めると。
そして、おさえようもない嫌悪感を抱く相手と、結婚しようとしている自分への嘲笑みたいなもの、あると思うんですよ。こんな皮肉なことはない。
こんなにも、本能が拒絶する相手と。それでも自分は、自分の意志で、誰に強制されるわけでもなく結婚しようとしているのだ・・・というね。
誰に向けたわけでもない怒りや、絶望や、そういうものもごちゃまぜになって、そしたら人間は、笑っちゃうのかもしれません。そして、そのときの笑みは、きっと凄いんだと思う。いろんな意味で。
なーんて。いろいろ考えてしまいました。しつこいようですが、あくまでも私の感想というか、予想です。
実際の今後の展開は、美内先生にしかわからない~(^^;