紫織さんの幸せとは

 今日は、美内すずえ 著『ガラスの仮面』に出てくる、紫織さんについて、語りたいと思います。☆印のついた言葉は、私が勝手に考えたり予想したものになります。

 以下、超個人的な今後の展開予想兼語りになりますので、そういうのを楽しめる方だけ、どうぞ~。

 ではさっそく。

 紫織さんが手首を切ったのは、感情が暴走した、パニックになったということもひとつの要因ではありますが。それよりも大きいのは、駄々っ子が買ってもらえないおもちゃを欲しがって、周りを気にする親の弱みにつけこみ、床にひっくり返って大暴れした・・・という要素のような気がするのです。


☆いいよいいよ、おもちゃ買ってくれないならいいですよーだ。
☆知らないからね。大暴れしちゃうんだから。店内にいるお客さん全員振り返るような大声出すよ、泣き喚くよ。
☆あ。もう今さら、買ってくれなくていいから。それは諦めたから。買ってもらうために泣くんじゃないよ。買ってくれないから泣くんだよ。悲しいから。
☆だからいいって。もう今さら買ってくれなくて結構。泣くのは、買ってくれないのが原因なんだからね。あたちが悪いんじゃないんだから、そこはわかってよね。
☆そんな・・・今さら買ってもいいよなんて甘え声出されたら、まるであたちがわがままみたいじゃない。脅かしたみたいじゃない。
☆まあ仕方ないわね。あたちが欲しがってたおもちゃに、新作のバービーもつけてくれるなら、もらってあげなくもないわよ。
☆しょうがないわね。もらってあげるわよ、ハイハイ。(まったく、最初からそうしろっての。大声で泣いたから喉嗄れちゃった。後でジュース買ってもらおっと)


 たかみやしおり。5歳。ひよこ組・・・という感じでしょうか(^^;

 フリフリの幼児ドレスを着て両親に傅かれた紫織さんが、この後当然のようにジュースを買ってもらうことは、予想に難くありません。その両手には、前々から欲しかったおもちゃと、新作バービーとがしっかり握られているでしょう。
 そして、そこに「困らせた」という罪悪感はどこにもないはずです。むしろ、「なんでさっさと言う通りにしないのよ!! 泣いたから喉が痛いじゃないのよ、まったく!!」という、真摯な怒りが渦巻いていることと思われます。

 想像してみましょう。紫織さん、病院に運ばれて、ベッドの上で目が覚めて。そのとき自分のしでかしたことを、そしてこれからのことを、どう思うのかなーって。

 私の予想なんですが。
 たぶん、速水さんが病室に付き添ってるね。鷹宮家の怒りを鎮めるためにも、それくらいのパフォーマンスはする。それは、速水さんにしかできないことだから。

 あの状況で、少しでも摩擦なく、いい方向に持っていくには。紫織さんはもとより、鷹宮家を懐柔することが必要。いたずらに怒りを倍増させることなど、あってはならないから。
 速水さんは冷静に、すべての予定をキャンセルして、紫織さんのために時間をつくると思う。万に一つの、希望を失わずに紫織さんが目覚めるのを待つ。そして。

 紫織さんが目覚めて。一番最初に目に入るのが、速水さんなのね。それで、速水さん微笑むの。とっても優しく。まあ、表情なんていくらでも作れますから。それができなきゃ、大都で社長業なんてやってませんよね。

 紫織さんは、速水さんのこと好きだからね。速水さんの顔見た瞬間に嬉しくなって、ぱっと顔を輝かせて。それからだんだん記憶が戻ってくるのね。


☆ここはどこなのかしら。病院? わたくしは一体・・・
☆ああ、この腕は。わたくし、死ねなかった。
☆真澄さまを永遠に、失うのだと思ったのに。
☆こうして二人きり。まだ、紫織に微笑んでくれますのね。
☆優しい人。わかっていますわ。あなたが紫織を見捨てることなどないと。

 


 みたいな感じでね。
 さめざめと泣きそうです。涙があとからあとから流れて。それを、速水さんが自前のハンカチでそっと拭ってくれて。
 それが心地よくて、心のどこかでマヤに優越感を感じる紫織さんだったり。今、現に彼は、マヤではなく自分の傍にいるのだから、と。

 以下、予想です。こんな感じで。


紫織☆お許しになって、真澄さま。紫織のこと、嫌いになりましたでしょう?
真澄☆・・・(あえて無言。紫織の出方を探る)
紫織☆いいんですのよ。わたくしのことなら、これ以上真澄さまにご迷惑をかけるわけには。わたくし、困らせるつもりじゃ・・・(語尾は言葉にならず、嗚咽する)
真澄☆仕事は、部下に任せてあります。しばらく休暇をとりました。ゆっくり話しましょう。
紫織☆わたくしはただ、真澄さまを愛しているのです。


 平行線だな、こりゃ(^^;
 たぶん、速水さんはもう、自分から婚約解消の話を無為に仕掛けることはないと思います。一回それやって、大失敗してるから。紫織さんの方からうまく、婚約解消の気持ちになるよう、誘導していく作戦に出るでしょう。

 あせりは禁物。だからとるはず、休暇の一週間。もしくは、多めに見積もって、一か月くらい? そこに、勝負を賭けるのです。

 一発逆転の最善策は、紫織さんの方から、速水家に婚約解消を申し入れること、ですね。そして紫織さんさえ味方につけたなら、婚約解消によって大都が妨害工作を受けることもないし、マヤの身に危険が及ぶこともないわけです。鷹宮家の面々がもし「恥をかかされた」と恨んでも、当の紫織が、大都やマヤへの手出しをさせまいとすれば、安泰でしょう。

 紫織さん次第で、どうにでもなる。

 
 結婚を強行するのか。
 それとも破談とするのか。

 速水さん、難しい立場ですね。優しくすれば、紫織さんは夢をみて、やはり結婚したいと言い始めるかもしれない。
 かといって冷たくあしらえば、その怒りは大都を、マヤを焼き尽くすかもしれない。嫌がらせをしようとすれば、いくらでもできますからね。また、同じことをすればいいだけ。自殺未遂をすれば、紫織さん自らがなにもしなくても、鷹宮のおじいさまが黙ってはいないでしょう。

 さて、私の予想は続きます。
 おそらく目が覚めて最初の3日間くらいは、お互いに敢えて、結婚のことには触れないと思うんですね。

 たぶん紫織さんは、まだまだ強烈に速水さんと結婚したいと思っていて。だから、不用意にそのことに触れて、また速水さんからはっきりした拒絶の言葉を聞いてしまうのを、恐れているはず。

 それで、紫織さんとしては、自分が懇願して婚約を継続してもらう、ということではなく。速水さんの方から言ってほしい、懇願してほしいと、考えているでしょう。以下、紫織さんの考える、究極の理想展開です。


速水☆紫織さん、ぼくはあなたが倒れているのを見たとき、自分の過ちに気付きました。どれほど、あなたを苦しめたのか。やっとわかりました。
紫織☆いいえ、同情など要りませんわ。あなたが愛しているのはマヤさん。
速水☆ぼくは仕事しか頭にない人間だった。あなたに出会うまで、それしかなかったんですよ。北島マヤは、大都に大きな利益をもたらす存在でした。だからこそぼくは彼女に、魅了されていた・・・彼女を手に入れれば、幻の紅天女を獲得できるから。
紫織☆(つらそうに顔を背ける)わたくしを慰めようなんて、なさらないで。
速水☆いいえ、どうか聞いてください。ぼくは倒れたあなたを見たとき、自分の愚かな過ちにやっと気付いたのです。
紫織☆真澄さま・・・・。
速水☆あなたを傷つけたぼくが、こんなことを言うのは間違っているのかもしれない。(自嘲の笑みと小さなため息)断ってくださっていい。いや、むしろ断るべきだと思います。それでもぼくはあなたに、あらためて結婚を申しこみたいのです。ぼくが妻にしたいと願うのは、あなたしかいないのですよ、紫織さん。


 
 この瞬間、紫織さんの脳内で、鳴り響く教会の鐘。いつまでもやむことなく鳴り響く、祝福の鐘、ですね(^^;

 私が思うに、紫織さんは自殺未遂という強硬手段に出ましたが、別に「形だけ結婚したい。形だけでも結婚できればそれでいい」なんて思っていないんじゃないかなあ。

 ちゃんと、速水さんには愛して欲しいと思ってるでしょう。妻として、北島マヤ以上の真剣な愛情を、期待している。形だけの結婚、冷たい新婚生活なんて、彼女の予想の中には、ないと思うのです。

 もちろん、病室で目が覚めたとき。速水さんにたいして、「結婚はもはや望まない」的な殊勝な言葉を、装飾として使うことはあるかもしれませんが。紫織さんの本心では。速水さんが最終的に自分を選んでくれることを、信じているのではないでしょうか。速水さんは自発的に反省し、もう一度紫織さんにまっすぐ、向き合ってくれるはずだと。

 体に傷までつけた自分を、真澄さまはいたわってくれるだろうと、心の奥底ではそう、考えていたと思います。
 紫織さんをそこまで追いつめてしまったのは自分が悪いのだと、速水さんが罪悪感にかられ、膝をついて許しを請うことを想像していたり。あらためて結婚を申しこまれることを、期待していたかもしれません。

 このへんは、本当に悪気なく、だと思います。
 そういう意味で、紫織さんは素直なんですよね。だって今まで、彼女の人生で思い通りにならなかったことはたぶん、なかった。鷹宮の名前は、彼女にとって魔法の呪文だった。自己否定の念なんて、これっぽっちもなくて。

 心の深い場所から、信じているわけです。自分を。
 愛されないはずがない。わたくしが初めて恋におちた真澄さまが、わたくしを愛してくださらないはずはない、と。

 そして、自分は速水さんにとって、愛するに値する存在だと、純粋に認識していると思うんですよ。

 鷹通の力は、必ず速水さんにとってプラスになるわけで。加えて女性としての魅力にも、不安はないと思います。実際、紫織さんはとても綺麗な女性で。
 マヤのことでゴタゴタする前には、速水さんはいつでも紫織さんを称え、褒めてくれたのですものね。
「ぼくだけを見ていなさい」なんて、究極の殺し文句だって聞かせてくれた。

 速水さんに愛されるのが当然であるはずの自分が、なぜ、当の速水さんから婚約解消を突き付けられたのか・・・・。

 そういう意味で、あの場での心の乱れはあったと思います。何かが違う、おかしい。こんなはずでは・・・と。だからこそ、ああいう思いきった行為に、衝動的に走ったという面もあるのでしょうが・・・。

 病院の白いベッドの上で。目覚めたときに、速水さんがいてくれて。そしたら紫織さんはほっとするでしょう。

 たとえば、以下のような感じで。


☆ああ、やっぱり。いろいろあったけど、やはり真澄さまはわたくしと結ばれる人なんだわ。おかしなことばかり続いて、混乱する日もあったけれど。
☆ようやく、元の場所に戻ってきた。ここが、はじまりの場所。
☆真澄さまが誤解を解き、詫び、そしてすべては望んだとおりに。みな、あるべき場所に収まるのだわ。
☆馬鹿ね、紫織。真澄さまを疑ったりして。真澄さまは、わたくしに不実であったことなど、一度もなかったのよ。
 


 マヤに対しても自分の本音に対しても誠実であろうとする速水さんが、今度はどんな言葉で紫織さんに語りかけるのか、興味があります。
 速水さんの手腕のみせどころですね。
 大都を大きくするために今まで使ってきたテクニックの集大成、みせてくれるのかも。

 私は思います。
 人は似たもの同士でないと、わかりあえない面もあるのではないかと。どんなに紫織さんが努力しても、紫織さんには踏み越えられない境界線を、速水さんは持っていて。
 そしてその境界線を、マヤだったら易々と踏み越えられる。わかりあえる。言葉じゃなく、理解しあえる。

 紫織さんがこの先、速水さんと結婚したとしても、速水さんだけじゃなく紫織さんだって、幸せにはなれませんよね・・・。

 組み合わせなんだと思います。
 紫織さんには紫織さんの、速水さんには速水さんにふさわしい相手がいる。そうでない相手と結婚すれば、ギシギシと歯車は嫌な音をたてて軋んで。どんなにがんばったところで、きっと、つらくなるばかり。
 苦しい思いをするのは、なにかが間違っているからなのかもしれません。
 物事は、スムーズに運ぶときにはまるで、魔法のようにすべてのパズルが当てはまって、するすると進行するものです。あっちに行って行きどまり、こっちにいって行きどまり、そういうのは根本的ななにかが、決定的に間違っているからなのかもしれない。

 人が、結ばれるべき人ともしも出会ってしまったら。もうそれ以外の道など、偽物でしかなくなるのかもしれないなあと、そう思いました。

サイト作成中

 今まで書いてきたレビューなどをまとめてHPを作ろうと思い、サイトを作成中です。

 HTMLとCSS、勉強してますが、奥深い~。あんまり凝ったつくりではなく、ごくごくシンプルなものにしようとは思ってますが、まだもう少し時間がかかりそうです。

 このブログも引越し予定でして、過去の記事を少し整理しました。

 ちゃんとサイトが完成するまでは、あんまり新しい記事を書いたりするのやめようと思ったのですが、ときどき書きたいネタがわいてくる~のです(^^;

 ついさっき、衝動的に書き上げたのが、『別冊花とゆめ』2011年6月号連載の、『ガラスの仮面』の一場面。そこからいろいろ想像がふくらんで、文章にしてしまいました。

 あのときの速水さん、なにを思っていたのかなあって。以下に載せるのは、あくまでも私の勝手な想像であり、パロディです。なので、そういうのが好きな方だけ、読んでください。

 

 

 

 

 


 

 

 その瞬間の景色は、鮮やかで、しかし奇妙に他人事のようで、現実感がなかった。

 紫織さんが倒れていた。薄い色の大理石の床を、血で染めて。流れた血の量で、彼女が本気であると知った。紫織さんは意識のないままそこに倒れて、微動だにしなかったが、この現場そのものが、主張だった。

 ——わたくしは、あなたと結婚するのです。そうでないなら、生きられない————–

 もし、面と向かって言われたなら。なにを馬鹿なことを、と一笑に付しただろう。だがこの場では、現実の自分は何一つ身動きがとれず。呆けたようにその場に立ち尽くして、ただただ、倒れ伏した婚約者を、みつめていた。

 当たり前だ。馬鹿なことを、と笑い飛ばし、それでもと強情を張るなら叱り飛ばしたい相手は今、目の前で崩れ落ち、意識をなくして倒れている。おれの話など、この人は聞かない。届くはずもない。
 それでも、ついさきほどまでは僅かな期待をかけていたのだ。
 心をこめて話せば、わかってもらえるかもしれないと。

 たとえ命を賭けても、手に入らないものはあるのだと彼女は知らないのだ。これが彼女の人生か、と、おれは思った。
 小さな頃から、思い通りにならないことなどなかったのだろう。
 

 
 頭だけがくるくるとせわしく回転していた。考えていた。これからの動きを。

 本能的な嫌悪感が、この光景を見た瞬間から全身を駆け巡っていた。こんな真似をする人だとは、思っていなかった。この人とは暮らせない。この人とは・・・無理だ。だが。

 おれはこの人と結婚することになるだろう。

 

 マヤ。一瞬、頭をかすめた愛しい姿を、意志の力で振り払った。ここで思うことそのものが、彼女を侮辱するような気がした。マヤを巻き込むようなことだけは、断じて避けなければならない。その体に、指一本触れさせるようなことなど、あってはならない。
 今がどれほど大切な時期か。スキャンダルはマヤから全てを奪うだろう。

 さよならを・・・それすら言えない。
 

 裏切られたと、おれを恨むか。
 約束を違えたと、泣いて怒るか。

 それでいい。憎んで憎んで、忘れてしまえ。憎しみは力だ。おれが望んだきみとの未来は、かなうことがなかったが、きみはきっとこの先、また別の夢を描くだろう。

 誰かが紫織さんに駆け寄り、止血の処置を始めた。
 それでもおれは動けない。
 救急車を呼びました、という声。鷹宮家にも連絡を、と指示する声。ざわめきが広がっていく。夢の中にいるようで、それは耳に届きながらもどこか、霞がかかっている。

 婚約者であり、目の前の事態を招いた張本人であるおれは、置物のように固まってその場に存在していた。自分が透明な何かになって、まるで誰の目にも入っていないのではないかと、そんな気さえした。
 本当にそうであってくれればいいのだが。もはや、おれには自分の存在意義を、見出すことができない。

 

 

 ・・・・・ いや、嘘だな。

 たった一つだけ。おれには許された価値が、ある。ただひとつ、おれに残された価値は・・・・・・・。

 紫織さん。お望み通り、差し上げますよ。欲しかったんでしょう? 理解などできないし、するつもりもありませんが。
 よかったですね。嬉しいですか? その傷は痛むかもしれないが、あなたは死なない。本気だったのはわかりますが、こんな場所を選ぶところがあなたらしい。

 この身と引き換えに、マヤが守れるのなら、もうなにも要りませんよ。
 ええ、平気です。
 ぼくは平気ですよ。あなたの、お望み通りに。

 血の気を失い、陶器のように白い速水の横顔に、いつしかうっすらと微笑が浮かんでいる。
 この場にそぐわない、背筋が凍るような頬笑みに、周囲のスタッフは、尋常ではないものを感じて息を呑んだ。結婚式を間近に控えた恋人同士のトラブルはよくある話だが、自殺未遂とは。
 まして、それを目にして笑う婚約者など。想像を超えている。

 この人はどこか、おかしいのではないか。狂っているのではないか。心配する素振りもみせず、血を流して倒れた婚約者を前に、突っ立ったままで笑っている。近付こうとさえしない。

 どう声をかけたらよいのかわからず。誰も速水には触れなかった。不気味さを感じ、遠巻きにするばかりだった。

 


 

 

 あのときの『別冊花とゆめ』を読んで、私の脳内に広がった光景が上記のような感じだったんですけど(^^;

 こういうこと書いちゃうのは、私が冷たいのかな~と、思ったりもしました。紫織さんに対して、もっと速水さんは優しくあるべきなのか?と自問してみたり。 普通なら、まあ愛情は持てないにせよ、こんなふうに怪我した時点で、ひとまずその場は駆け寄り、体を心配して、救急車の到着をイライラして待つ・・・みたいなのが、通常なのかなあ。

 

 でも、私はあのとき、速水さんの体の表面を電気のように走った嫌悪感、リアルに想像しちゃったんですよね・・・・。

 こんな真似するのかっていう、紫織さんへの蔑みみたいなものを。

 

 ああ、もちろん速水さんは、紫織さんのことを気の毒に思ってないわけじゃないし、それまでの自分の行動が、紫織さんに期待を抱かせるようなものであったことを反省もしてるだろうし。もちろん、罪悪感も感じていると思います。

 

 ただ、この、蔑みめいた気持ちが自然に、どうしようもなく湧いてくるっていうのも、あるんじゃないかな~と。ピリピリっと体中に走る、電気みたいな嫌悪感。

 

 あの場面を見て。それは速水さんには衝撃の光景だっただろうし、血の量に本気度も感じただろうし、だけど。同時に、どこか冷静に判断もしてたんじゃないかな。死には至らないと。全体を把握して。

 そして、自動的に出てしまう結論。

 

 認めたくなくても。今までの速水さんがずっとそうしてきたように、頭は勝手に回転して、感情抜きに冷静な結論をたたき出してしまっただろうなあ。

 

 「自分は紫織さんと結婚せざるをえないのだ」と。

 

 そうなんですよ。もう一択しかない。

 だって、紅天女の試演を控えた、大事な時期ですよ。ここでしくじったら、マヤを守れない。

 

 それにね。紫織さん、あきらめてくれるなら、あんな行動には出なかった。あれは、ある意味、積極的な宣戦布告でもあるのだと。今はまだ、その攻撃対象は、紫織さん自身に向いていますけどね。

 速水さんがあくまで、マヤと一緒になろうとするなら。第二弾、第三弾の攻撃はくるだろうと予想します。その矛先が、速水さんになるかマヤになるか、あるいはその両方になるか。

 

 そういうこと。あの状況下で一瞬にして、速水さんは理解してしまったのではないかと。その鋭い分析力こそが、速水さんの強みであり、弱さでもある。

 

 いっそなにも気付かない、そこまで考えの及ばない人であったなら。

 あくまで自分の考えを主張し、今後もなにがあろうと、婚約解消の意志を曲げないというスタンスを保持することもできたでしょうが。

 

 速水さん、きっとわかっちゃったから。

 わかっちゃったらもう、そうするしかないんじゃないかと。マヤを守るために、マヤを諦めると。

 

 そして、おさえようもない嫌悪感を抱く相手と、結婚しようとしている自分への嘲笑みたいなもの、あると思うんですよ。こんな皮肉なことはない。

 こんなにも、本能が拒絶する相手と。それでも自分は、自分の意志で、誰に強制されるわけでもなく結婚しようとしているのだ・・・というね。

 

 誰に向けたわけでもない怒りや、絶望や、そういうものもごちゃまぜになって、そしたら人間は、笑っちゃうのかもしれません。そして、そのときの笑みは、きっと凄いんだと思う。いろんな意味で。

 

 なーんて。いろいろ考えてしまいました。しつこいようですが、あくまでも私の感想というか、予想です。

 実際の今後の展開は、美内先生にしかわからない~(^^;

速水さんにとっての、幸せな結末。その定義とは。

『ガラスの仮面』美内すずえ著 に登場する速水さんの八方塞がりっぷりについて、今日は語りたいと思います。文中、ケースその○、に記載のセリフや心情等は、あくまで私が勝手に予想した ものです。実際に原作にあるセリフ等ではありません。また、いろいろ暗い予想などもしておりますので、そうしたものが苦手の方はご注意ください。

速水さんに、果たして出口はあるのだろうか? ということを、考えていました。
幸せな結末、納得のハッピーエンド、状況が揃えば、それは可能だろうか? と。
たとえば、ちょっと前の速水さんなら。『別冊花とゆめ』2011年3月号より前の、速水さんだったらこんな感じ。

ケースその1

マヤ☆速水さん、あたしあなたが好きです。
速水☆(なっなにを言い出すんだ。これは罠か?)

ケースその2

マヤ☆速水さん、あたしあなたが好きです。
速水☆(チビちゃん、今きみはきっとひどく混乱して、自分を見失っているんだ、正気じゃない。)

ケースその3

マヤ☆速水さん、あたしあなたが好きです。
速水☆(もう憎んでいないと、許したと言いたいのか。フッ。ようやくマイナスからゼロへ格上げされたようだな)

ケースその4

マヤ☆速水さん、あたしあなたが好きです。
速水☆(気の迷いか? だがきみはおれを知らない。本当のおれを知れば、きっと熱は冷めるだろう)

これがたとえばあの社務所シーンで。あれだけ究極の、他に誰もいない二人だけの空間が一定時間確保されたあの場所で、もし、マヤがストレートに「好きです」と愛の告白をしたとして。
虚勢を張る必要のない速水さんが、マヤの告白をどう受けとめるか・・・。
私にはどうしても、上記4ケースのように、愛されてる事実を全力で否定する速水さんの姿しか見えてこないのですよね。

ケースその1では、なにかの計略だとマヤの真意を疑い。
その2ではマヤの正気を疑い。
その3では言葉の解釈をねじふせ。
その4では、愛されるはずはない、その価値もないと自嘲する。

どこからどう攻めても、速水さんが両思いを喜び、幸福感に包まれる展開が見えてこないんですよね~(^^;

では、『別冊花とゆめ』2011年6月号以降ではどうでしょう?
二人の距離はかつてないほど急接近しましたが、速水さんに変化はあらわれるのでしょうか?

ケースその5

マヤ☆速水さん、あたしあなたが好きです。
速水☆(おれもだ。だが今きみの手をとれば、きみはスキャンダルに巻き込まれ、紅天女の夢を失う。舞台に立ち続けられるかもわからない。おれにはそんなことは、耐えられない。)

さすがに、6月号以降で、マヤの心を疑うということはないでしょうけども、焦点は「マヤの幸せ」に絞られてくるような・・・・。
速水さんと一緒になることが、マヤの幸せなのか、ということ。
このことについて、実は誰より疑念を抱いているのは、速水真澄本人その人なのではないかと想像しました・・・・。

マヤが無邪気に「好き」と愛情を口にすればするほど、両思いが幸せであればこそ、速水さんはより一層強い気持ちで、マヤを守ろうとするのではないのかと。
そして、マヤが愛を主張するごとに、速水さんは追いこまれていくのです。

根底にある、「自己否定」の気持ちに。

自分と一緒になることが、マヤにとって本当の幸せなのか?と。速水さんはそれを、信じていないと思うから。疑問形ではなく、実は深層心理では強烈に、思いこんでいる部分があるのではないかと。

やっと踏み出した一歩。
迷いながら、それでも初めての感情の濁流に飲み込まれて、速水さんが蓋をしていた自分の気持ちに素直になった次の瞬間、現れてた現実は、紫織さんの自殺未遂。
マヤに、近付いてはいけない。彼女を不幸にするから。
ほら、やっぱりそうだったじゃないか。
マヤと歩こうと決めたって、やはり現実はそれを、許さないじゃないか。

マヤには若さがある。未来がある。
不幸をしかもたらさないような自分と、一時の盛り上がり、気の迷いで結ばれたとして、彼女がそれを後悔しない日がこないと、誰に言えるのか。
たとえばあの桜小路となら、お似合いの二人。きっとマヤは絵に描いたような平穏な幸せが手に入るのに。

なーんて。
速水さんの頭の中、いろんな思いが渦巻くでしょう。

速水さんにくらべたら、マヤの視野は狭い。それはまあ、誰が考えてもそうでしょうね。
彼女が彼女なりに本気で、「あたしは平気。なにがあっても平気」なんて、速水さんを抱きしめたとしても。
彼は、自分自身に問うでしょう。
「マヤはただ、この後におこる現実の厳しさを知らないだけなのに。それでも判断を委ねてしまえるのか? きみが選んだことだと責任を逃れて、己の欲望さえ遂げられたら、お前はそれで満足なのか?」

まったくの予想なのですが、上記のように考えてみると、あの4月号の、マヤちゃん抱擁シーンがまた、伏線のように思えてきます。こんなセリフがありましたよね。

>あたし大人になりますから・・・! 早く大人になりますから・・・!
>待っていてください・・・! 速水さん・・・!
>あたしのこと待ってて・・・!

マヤちゃん渾身の言葉、魂の叫びを、速水さんは結果的に、裏切るような形になるのではと。そうすることが、彼女のためになると信じて。
あるいは・・・そうした動きの中で、彼はマヤと、永遠の別れをすることになるのかもしれないと思いました。

紅天女は、そういうお話だと思うのです。
死と再生。つながる命。一度失わなければ得られない、気付けない真実。捧げられた思い。

4月号で、マヤが必死になって追いかけた速水さんの背中。
それは、その先の悲しい別れを、象徴する幻像のようなものかもしれません。マヤが思わず、ためらいを投げ捨てて追いかけずにはいられなかったその背中。
彼はいつも、なにも言わずに先に行ってしまうから。

残された者は、幾度もその背中を思い出すでしょう。

ガラスの仮面世界を、現実に置き換えるなら。

 ガラスの仮面世界を現実に置き換えたらどうなるか、を、今日は語ってみたいと思います。
 一部、『はいからさんが通る』大和和紀 著 に関しても語っており、ネタばれ含んでおりますので、未読の方はご注意ください。

 さて、ではさっそく。
 速水さんの御屋敷は、千代田区の番町、もしくは荻窪(北ではなく南側)、吉祥寺あたりではないかなと想像しました。

 歴史がある古いお屋敷町とか。うっそうとした大木からも歴史が感じられるような、少し、陰のイメージがあるような場所を想像します。英介は成金なので、ああいう名家の御屋敷を、金に糸目をつけずに買い上げたりして、成金ゆえのコンプレックスをそういうことで解消してそうな・・・。お金で歴史を買うことに、喜びを感じていそうです。

 こういうときにお約束の田園調布は、むしろきちんと区画整理されていて明るいので、ああいう大木の生い茂る、歴史ある雰囲気、陰の空気、というのはあまりないですよね。だから田園調布では、ないだろうなあ。

 速水さんが仕事用に契約しているマンションは、汐留にある東京ツインパークスとかどうでしょう。サラリーマンの街、新橋駅にも近く、商談の後、寝るだけのために高層階の部屋をキープしてそう・・。
 そして、飲みたいときにはお隣のホテル、コンラッド東京やホテルヴィラフォンティーヌ汐留のバーで飲む、と。
 ここはあくまで仕事用にだけ使いそうですが、癒しのためにもう一軒契約するといえば、やっぱり広尾の低層階マンション。緑に囲まれた一室をキープして、誰にも邪魔されない時間を楽しんでいるイメージがあります。

 そして、他にも月島のリバーシティのマンションも持ってると思います(^^)これは、銀座で接待した後、遅くなったときなどに・・・。

 マヤが住んでるのは、たぶん中野か、高円寺、阿佐ヶ谷、あの辺かな~。若手芸人さんが住んでる街っぽいですよね。いや、高円寺だと逆に今はオシャレで、マヤには似合わないか。ここはやはり、思いきって阿佐ヶ谷本命で。お隣の荻窪に速水さんのお屋敷があれば、距離も近くていいかも。 阿佐ヶ谷の公園でブランコこいでるマヤを、車で通りがかった速水さんが発見、というのもありえるパターンになりますよね。ちょうど通りがかりということで。
 あー、こういうの、考えてると楽しくなってきますね。

 大都芸能は、東宝をモデルにしているんだろうと思うので、私のイメージでは東京宝塚劇場のビルです。あそこの最上階に、社長室があるはず・・・と想像してます。
 そして東宝の御曹司、松岡修造さん・・・・彼がもっと無口で、テニスプレーヤーじゃなく経営が三度の飯より大好物、という人物であったなら、まさに速水真澄だと思いませんか? ルックスは華があると思うし、クールでバリバリ仕事してたら、女性にキャーキャー言われる若社長だったろうなあ、と思ったりします。タレントオーラ、あると思うのです。「あのカッコイイ人、誰?」「バカね、あれが噂の冷血鬼社長なのよ」とか、ひそひそ囁かれたりしそう…。

 でも、濃さと熱さが、速水さんとの違いかなあ。どちらもかっこいいけど、タイプが違いますね。

 速水さんの目の奥は冷えていそうだけど、松岡さんにはむしろ、炎を感じます。

 そう・・・速水さんは現実の人に置き換えるよりも、『はいからさんが通る』の伊集院忍を重ねてみると、ぴったりくるかも。いつの頃からか、私の中では同じイメージになってしまっています。

 少し皮肉屋なところも、意地悪なところも。まっすぐなところも。情熱的なところも。儚いところも綺麗なところも。
 

 伊集院忍も、紅緒さんのためなら、なりふり構わず捨て身になれる強さを持った人でした。そして、信頼できる誰かに、恋人を託そうとする姿も重なるかなあ。

 少尉は、紅緒さんの幸せを青江冬星に託しましたからね。あれは、「ラリサを不幸にできない」とか、「ラリサの夫として過ごした事実は、紅緒さんへの裏切りにあたる」とかそういうものではなく、一番の理由は「青江冬星のほうが、自分よりも紅緒さんを幸せにできるから」だったのだと、今ではそう思うようになりました。
 子供の頃読んだときには、ほんっとに理解できなかったんですけど。あのときの少尉の行動が。

 いいじゃん。せっかく記憶取り戻したのに、どうして紅緒さんの元へ戻らないの? 紅緒さんは、少尉がラリサと暮らしてたことなんて気にしないよ。喜んでくれるよ。なのにどうして? 他の人の夫として暮らしたことが、そんなにも重大な裏切りなの? と、苛立たしい思いでいっぱいの小学生でございました(笑)

 でも、今はわかるなあ。
 そういう単純なことじゃなくて。
 自分たちだけの問題じゃない。周りも考えなくちゃいけないのが大人なのだし。一番波風を立てず、誰も傷つけず、そしてなにより、紅緒さんを幸せにできる男(編集長)が傍にいたのだから。少尉が身を引いたのはあれは、なによりの愛情だったのだなあと。紅緒さんのために、ああいう行動に出たんだなあって。

 クルーズ後の速水さんが、拳をにぎりしめ、ぐっと気持ちを抑えて桜小路君にマヤを託したのも、きっと同じ気持ちだったのかと・・・。
 今自分が動けば、傷付く(傷つけられる)のはマヤですから。
 その人を守るためなら、自分の気持ちなど二の次ですね。

 はいからさんは見事完結しましたが、ガラスの仮面はどういうラストを迎えるのでしょう。楽しみです。

速水さんの結婚、その目的

『ガラスの仮面』で、もし今後、速水さんがマヤを守るために紫織さんと結婚したら? その後、マヤとはもう会わないだろうなあ~と思いました。以下、いろいろと想像して語りますが、あくまで個人的な感想だったり予想ですので、そうしたものが苦手な方はご注意ください。

中途半端に会えば、苦しくないですか?という話です(^^;

会ったらますます好きになっちゃうだろうし。目の前にいて、笑ってくれて、それでも自分の立場はがんじがらめで。手を伸ばせばそこにいるのに、触れることもできないというのは、拷問としか思えません・・・。

それに、紫織さんが目を光らせていること、速水さんはわかっていますしね。紫織さんは無理に速水さんと結婚すれば、ずっと心配し続けなくてはいけません。真澄さま、まだあのマヤさんに心を残しているのかしら、と、ずっと。

そんな状況下で、速水さんがマヤと密かに会うというのは、危険すぎる。
裏切りを知ったら、即効、紫織さんから刺客が放たれたりして。その場合、標的は明らかに、速水さんではない。

人目を忍んだ逢引の場で、凶弾に倒れるマヤ。青ざめて白目になる速水さん。そこに平然と現れる紫織。

☆紫織さん。まさかあなたが・・・
☆あら、わたくしではありませんわ。この子を殺したのはあなた。
☆・・・・
☆わたくしは動きませんでしたわ。あなたさえ動かなければ。
☆殺すならぼくを・・・なぜマヤなんです!!
☆忘れないで。この子を殺したのはあなた。あなたがマヤさんに近付かなければ、わたくしはなにもしなかったのですから。
☆・・・・
☆そうさせたのはあなたですわ!

あくまで想像ですけども。
結婚後に黙ってマヤと会い続けたら、上記☆のような展開もないとはいえないかも・・・。紫織さんは激情型だし、その気になればどんな手段でも平然ととりそう。しかも皮肉なことに、たいていのことならなんでも実現できる、強力なバックがあるわけで。

結婚しても疑心暗鬼で、常に不倫の影に怯えて。
速水さんの前ではそんな素振りを少しも見せずに、外部に向かっては幸せな新妻を必要以上にアピールしつつ。

わずかな裏切りの兆候を。執拗に追い求め、探し続ける気がするんですよね。もう、執念といっていいほどのねちっこさで。
そして、いつかその証拠を握ったら、笑いそうな気がする。ある意味、満足してそうなんですよ、その時点で。

恐れて恐れて、なければいいと思いつつ、実は心のどこかで「そうであってくれればいい。いや、絶対にあの二人はつながっているはずだ」という確信を持って。

速水さんの不倫を糾弾することが、人生の目標になっちゃってたりして。矛盾して、ぐちゃぐちゃに乱れた心。だからこそ、もしマスマヤが不倫などということにでもなれば、本当に半分、紫織さんの心は狂って、愚かな行為に走りかねないなあと。

☆やっぱりね。ほら、わたくしの思ったとおり。
☆わたくしにはわかっていましたわ。真澄さまの裏切り。
☆隠し通せるとでも思っていましたの?
☆真澄さまはわたくしの、なにを見ていたのかしら。
☆紫織は黙っているだけの、大人しいお人形じゃありませんのよ。

☆は、あくまで想像です。

恐らくは。速水さんが今後鷹宮家との縁談を進めるとしたら、それはマヤのためにすることなんですよね。紫織さんに気持ちなんて、一ミリもない。現に、本人に婚約解消を申し込んでますし。

だからこそ、そんな紫織さんとの結婚に踏み切るとしたら、理由はただひとつしか考えられない。

「そうすることでしか、マヤを守れない」、ですね。

そんな決死の覚悟で、自分の人生を賭けてマヤを守った速水さんが、その後、マヤと不用意に会ったり、不倫の関係に進む・・・ことはなさそうです。むしろ、必死になって、彼女を徹底的に避けそう。

遠ざかって遠ざかって、でもこっそり遠くで見守ってる、みたいな。決して物理的に近付くことはなくても、その分、神経をとがらせて、彼女の動向に敏感になって、幸せを祈りつつも。ひとたび彼女が他の誰かと噂になれば、自分にはその資格がないと知りながら、それでも嫉妬に心を引き裂かれて。

マヤの職業が女優である、ということが悲しいですね。

離れても、マヤの名前や顔は、なにかしら情報として飛びこんできそう。偶然つけたテレビ、広げてみた雑誌、街中の雑談。

「北島マヤ」の文字が、顔が、言葉が躍るたびに、速水さんは胸をドキドキさせるのだろうか。

もし彼女が困れば、聖さんを使って遠くから手を差し伸べるのかもしれない。聖さんを動かす分には、紫織さんに気付かれる危険性も少ないだろうし。
聖さんはいつものように速水さんの指示を、黙って受けるんだろうなあ。問うことも責めることもせずに。穏やかな表情で。

会うことは叶わなくても。遠くからそうして繋がることで。
速水さんは生きていく意味をかみしめるのでしょうか。心を殺した結婚で、マヤを守ることに自分の命の意味はあるのだと。
自分が紫織の夫であるかぎり、マヤの身に危険は及ばないのだと。

だから、いつかマヤが他の誰かと結婚しても。
遠くからずっと見守るんだろうなあと思いました。二度と、直接会ったり、言葉を交わすことがなくても。
心だけで繋がり続ける。まさに、魂のかたわれですね。