3月号を読んだとき、頭に浮かんだ情景 その1

 前回の続きです。別冊花とゆめ『ガラスの仮面』美内すずえ著 の、最近の連載についての感想などを語ります。かなり個人的な今後の展開予想などを書いていますので、そうしたものが苦手な方はご注意ください。

 私、3月号を読み終えた時点で、すっごく浮かんできた絵があったんですよね。4月号はまだ読んでなくて、3月号を読んだばかりの時点で、パっと浮かんできた図。あくまで私の想像した展開、ですが。

 速水さんはマヤを伊豆に招待しようと思ったものの、結局失敗してしまうんじゃないだろうか。婚約の事実はどうあがいても、今さら取り消しできなくて。
 マヤの身の安全を盾にとられるとか、紫織さんが自殺未遂するとか、とにかくいろいろあって、速水さんがどう抗っても、結局紫織さんと速水さんは結婚することになってしまう、と。

 そしたら速水さんは、どうやってマヤに接するか悩むだろうなあ。クルーズでいい雰囲気になったからこそ、マヤにははっきりと伝えなくてはいけない事実なわけで。「結婚は予定通り行われる」と。そして伊豆への招待を、取り消す必要がある。

 紫織さんと結婚することが決定したら、速水さんはどう動くだろうか。もうマヤとは関係がなくなる? いやいや、紅天女がある。今さら、一切無関係で・・・とはならないだろうなあ。

 そしたら、自分のプロダクションに、マヤを所属させようとしたりして。そうすることで、マヤを守る、みたいな。そうすれば少なくとも、マヤが芸能界で誰かに騙されたり、酷い目に遭うってことはなくなるだろう。
 大都で紅天女を上演するのは英介の長年の夢でもある。マヤが紅天女の上演権を手にしたら、それは所属プロの大都が紅天女を手にしたも同然で。

 英介がどれだけ紅天女に執着してきたか、その話をすれば、紫織さんもマヤの大都への所属には、納得するはず。単に速水さんが「そうしたい」と言えば、「あの子だけはやめて」と邪推して妨害するかもしれないけど、「これは英介の積年の夢なのだ」と説得することで、紫織さんの了解は得られる。
 結婚をごり押しした負い目があれば、紫織さんは速水さんの気持ちを知る分、英介の機嫌を損ねたくはないだろうから。せめて、舅になる人に、少しでも気に入ってもらおうと「マヤの大都入り」を承知するでしょう。

 なにしろ彼女は、「結局のところ、速水真澄と結婚できる」という事実の前には、寛容にならざるを得ない。嫉妬心をむきだしにすることは、それなりにプライドも傷つくだろうし。

 大都に所属しないかとマヤを誘い、船上でのことは、あれはすべて忘れてくれと彼女に告げるのは、速水さんにとっては決死の作業になります。自分の心を偽る、つらくてせつない行為。でも速水さん本人以外に、誰も代われない。
 

 きっとマヤを、社長室に呼びだすね。夕暮れ時。それで、ブラインド上げてるから夕陽がまぶしくて、速水さんをみつめるマヤには、シルエットしかみえないの。それを幸いに、速水さんはマヤの目を一切見ることなく、彼女に嘘を吐くんじゃないだろうかと。背中を向けたまま、心にもない台詞を。
 

 そのときのマヤには、速水さんがなにを考えているのか全然わからなくて。船上のときとはまるで別人で、彼がとても遠い存在に思えて。泣けてくるだろうなあと思ったのです。

 マヤがそんな状態で紅天女の上演権の話をされたら、「速水さんが私に抱いた興味は、結局それだったのか」と誤解しそうで。

 それで、そのとき思わず書いた文章があるので、載せます。私は3月号を読み終えた当時、こんな情景を想像してたのです。文字に起こしました。
  速水さんに裏切られる形のマヤちゃん。その目に映った光景は、こんな感じでしょうか。

 これも一応、二次創作というかパロディになるのかな? 短いですけど・・・。以下、気軽に楽しめる方だけご覧ください。個人的な展開予想です。

 
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 「きみの演劇の才能はおれが評価している。もっと自信をもて」

 そう告げた速水さんは、窓の向こうを向いたままで、こちらを振り返りもしない。あたしがそれだけの存在なのか、顔を向けるだけの価値もないのか。だからあたしには、速水さんの表情が見えない。なにを考えているのかなんて、わかりようもない・・・・。

 痛いほどの夕陽が照らす室内は、なにもかもが赤く染まっている。窓の外を向いたきりの速水さんは、眩しくないのだろうか。あたしが水城さんに案内されて入ってきたときから、その場所を動かずにいる。シルエットは影になり、あたしの目にはひどく・・・遠い存在に見えた。

「あたし・・・・大都にとって魅力的な商品なんですか?あたしは・・・」
「価値はあるさ。そうでなければ大都に誘ったりはしない。おれは安っぽい同情などに興味がない男だからな。だからこの先、きみが女優としての価値をなくしたら、遠慮なく切らせてもらう」

 冷えた、感情のこもらない声だった。その声は、クルーズのときとは全く別人で、あたしは自分の足が熱を失っていくのを感じた。とめようとしても、どうしようもなく冷気が、じわじわとつま先から膝へ上がっていく。

「きみが手に入れるかもしれない紅天女の上演権。あれは、大都に任せることが最良の選択だぞ。大都のためじゃない。これはきみのためでもある。大都がやれば、きみが妙な話に騙されることもないだろう。あの作品だけは・・・・おれもおやじも、特別な思いを持ってる。悪いようにはしない」

「あたしの価値は、紅天女の価値にあると・・・」

「そうは言ってない。きみはたいした子だよ。クルーズで、おれはどうかしていた・・・そうさせたのはきみの演技だ」

 ズキーンと、心臓が悲鳴をあげる音がした。あれは、演技なんかじゃないのに。あたしは紫のバラの人に、自分の本当の気持ちを伝えただけ。演技なんかじゃない、あれがあたしの本当の心。速水さん! わかってくれたんじゃなかったの?

「おれは・・・どうかしていたよ。きみの演技にすっかり魅せられ、ばかなことも口にした。だがおれが心惹かれたのはきみの阿古夜であって、きみではない。そんなこともわからないほど、きみも子供じゃないだろう、チビちゃん」

 いつもは温かい「チビちゃん」という言葉には、明らかな悪意がこもっており。だからといってあたしにはなすすべなどない。だって、本当にその通りだから。あたしなんかを、速水さんが本気で相手にするわけないんだから。そんなことわかってた。わかってたのに!!

「念のため言っておくが、おれがきみを伊豆へ呼ぶこともない。あそこはおれの、特別な場所だから。他人を引き入れるつもりなどない。きみが断ることを見越して口にしたのに、あっさりうなずくから驚いたよ。きみはきっと、そういうことにためらいがないんだろう」

 そういうことって、どういう意味ですか・・・・問い返してやりたいという気持ちが、カっとあたしの中で強く燃え上がった。だけど次の瞬間、その怒りはすべて、涙になって流れ出した。泣いちゃだめだ、こんなところで泣きたくない。速水さんの前で。

 背中を向けたままの速水さんに感謝した。ゆっくり、息をして。自分に言い聞かせるあたしは平気。本当の気持ち、もう二度と見せたりしない。速水さんが望む女優の北島マヤを演じるだけ。女優なら、感情なんてちっとも痛くない。なにも感じない。

「わかりました。もう帰ります。速水さん、あたしの演技評価してくれて、ありがとうございました。試演、がんばりますから」

 すらすらと口から出てきた言葉に、おかしな動揺は欠片もみえなかった、と、思う。後ろを向かない速水さんには、あたしの本当の気持ちは、絶対にわからないだろう。彼がライターを使う音がした。煙が上がるのを見た。気まずい沈黙が、あたしたちの間にある。

 このまま返事を待たずに、あたしは出ていくべきだろうか。そのほうが自然だろうか。

 そう思いながらも、あたしは未練がましくソファに腰を下ろしたまま、動こうとしない。そう、待っている。どんな言葉であれ。あたしは速水さんの言葉を少しでも、一言でも狂おしいほど待ち望んでいる。こんな状況でさえ、恋しくて、発狂しそうになりながら。

 ここまで絶望的な状況だからこそ、自分がどんなに速水さんに甘えているのか、あたしは思い知った。依存といってもいい。優しい言葉がほしかった。

 だけどあたしの思いはあっさり打ち砕かれた。
  速水さんは最後まであたしを見てはくれなかったのだ。長い、息苦しいほどの沈黙の後で、速水さんがくれた言葉。それは。

「さよなら、チビちゃん」

 速水さんの声は低く、少し掠れていた。
 終わりだと思った。
 あたしは立ち上がる。絶対、不自然さを悟られてはいけない。ごく当たり前の動作が、ひどく難しかった。でも平気。これはあたしじゃない。女優、北島マヤなんだから。 さあ立ち上がって、あのドアまで歩いて。扉を開いて。そう、ゆっくり閉めたら、それで・・・・終わり。

 社長室のドアを閉めると、水城さんと目があったので慌てて駆け出した。自分をさらけだしてしまいそうだったから。そんなやりとりを速水さんに聞かれるくらいなら、死んだほうがましだ。

 あたしはこの日、もう二度と速水さんに、淡い期待なんて抱かないと誓った・・・。

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 3月号を読み終えたとき、思わず書いてしまった文章でした。あ、もちろん勝手な個人予想ですので、この先、こんなシーンが展開されることはないでしょうが・・・。4月号からまた、あらたな動きもありましたし。

 もしマヤに嘘をつくことになれば、速水さん、どれだけ心が痛いのかなあと。きっと目を見ずにしゃべるだろうなと、そう思いました。心にもない言葉をすらすら並べるのは、どんな気持ちでしょう。それで、目すら合わせない状況だからこそマヤは速水さんの真意を量りかねて、誤解して。

 マヤはもうそのときには、つかつかと速水さんの真正面まで歩いて行って、じっと瞳を見据えるような勇気など、ないだろうなと。

 ただただ、二人を包む沈黙と、夕焼けの強い光。
 その光景は、傍からみたらどれだけせつないだろうなあと、想像したの
でした。

『ガラスの仮面』紫のバラ投げつけ事件

 『ガラスの仮面』の、紫のバラ投げつけ事件について語ります。ネタバレ含んでおりますので、未読の方はご注意ください。

 今日は、以前に雑誌掲載された「紫のバラ投げつけ事件」について、語ろうと思います。この事件、ひどい~という反響もあったようですが、私には納得というか、理解できる行動でした。

 最初に流し読みしたときには、確かに私も「非道い」と思ったんですけどね(^^;

 ただ、よくよく読みこんで速水さんの気持ちになってみれば、わかるなあ、と感じたのです。
 きっと、速水さんは紫のバラに、それほどの価値を感じていないから。

 これ、紫のバラを贈っていたのが全くの別人なら、こういう行動はしていなかったでしょう。マヤがその人に寄せる思慕の念を尊重して、また、その人のこれまでの尽力に感謝をして(どれだけマヤの心を救ったかわかりませんからね)、あんな、紫のバラの歴史を踏みにじるような行為には及ばなかったと思うんです。
 マヤを奮起させるなら、もっと別の方法をとったでしょう。

 なぜ彼が、紫のバラをマヤに投げつけたか・・・・。それは、自分が紫のバラの人だったから。自分のやってきたことなど、なんの価値もないと、本気でそう思っているからではないでしょうか。
 だから、いくら貶めるような行為をしても、なんの問題もないわけです。貶められるのは、自分自身。

 そして、そんな紫のバラを贈り続けた幻の人物=愚かな自分自身を、まるで聖人のように崇め、一途に想い続けるマヤへの、愛の鞭ではなかったでしょうか。

 紫のバラなんて、どうしようもない。マヤが想いを寄せる幻は、偶像は、彼女が描いたような聖人君子じゃないわけです。それは、速水さん自身がよく、わかってる。
 マヤが紫のバラを敬愛し、恋愛のような感情を抱けば抱くほど、速水さんは苦しくなったんではないでしょうか。

 本当のことを知れば、君だってがっかりするだろう、と。
 今まで期待が大きかった分、一層怒り、失望するかもしれない。だからこのさい、君が後生大事に抱え込んだ、その空虚な憧れを踏みにじってあげるよ、と。
 もちろん、その場では痛みを覚えるだろうけれど、その痛みが、前進するパワーに変わること、速水さんは信じていたんだと思います。

 今さら憎まれることに、躊躇はなかったでしょうね、たぶん。

 マヤの中で、神聖な位置を占める紫のバラを敢えて汚すことで、速水さんは自分自身をも、斬り捨てていたのかなあと思います。

 紫のバラが、なんぼのもんじゃいと(^^;
 マヤがその人を神聖視すればするほど、苛立ち、大声でそれを否定したくなる衝動をこらえてきた、その鬱憤が、一気に爆発した瞬間であったのかもしれません。
 あの花束を投げつけて、ショックに震えるマヤを見たときに、どこかで溜飲が下がる思いをしていたのではないか、とさえ邪推するのです。

 絶対に正体を明かせない、もう一人の自分。
 マヤがその人を好きになればなるほど、苦しくなったでしょう。だって名乗りをあげることなどできないし、マヤが恋しているのは自分ではない、幻のあしながおじさんなのだし。その人が、マヤの思うような純粋無垢な人物ではないこと、自分が一番よく知っているわけで。

 紫のバラは、しょせん自分が作り上げた架空の人物。ならば、その存在を利用し、マヤを傷つけることで、彼女を一段と奮起させようと決意したのは、自然の流れだったような気がします。
 マヤが思うほど、紫のバラというアイテムは、速水さんの中で重要ではないと思うから。

 自分が作り出した、彼女との細いつながり。
 嫌味を交えずに素直に、彼女への賞賛の言葉を口にできる、速水さんの仮面。
 自分で創りだしたものだからこそ、汚すのにもためらいはなかったと思います。そうしたところで、傷ついた名誉は自分自身のものなのですから。

 思えば、紫のバラは寂しい色ですね。
 最初に花を贈るとき、なぜこの色にしたんでしょう。直感で選んだのでしょうが、ファンとして贈るには少し、控えめすぎる色のような気がします。

 それだけ素直な気持ちで、そのとき、マヤに花を贈りたいと思ったのでしょうか。心を偽らずに、自分の率直な気持ちをそのまま贈りたいと願ったのかもしれません。

 このバラ投げつけエピソード、今後、コミックスになるかどうかはわかりませんが、どうなんでしょうね・・・。最新の『別冊花とゆめ』で、ようやく進展したようにみえる二人の距離を考えると、このエピソードがこのまま採用されるかどうかは微妙なところですが。

 でも私はこの先、マヤと速水さんは、一般的なハッピーエンドという結末は迎えないだろうと思っているので。二人を引き離すその大きな運命の力を悟ったとき、速水さんは荒療治で、マヤを突き放すんじゃないかと思っているのです。
 へたな優しさはむしろ、マヤを一層傷つけるだろうから。

 バラ投げでなくとも、それと同等のひどいやり方(マヤから見たときに)で、自分をもマヤをも、斬ってしまうような気がしてなりません。 

『ガラスの仮面』桜小路君が速水さんの立場だったら

『ガラスの仮面』指輪事件で、これがもし桜小路君だったらどうしただろうかと考えてみました。以下、ネタバレも含んで語っておりますので、漫画を未読の方はご注意ください。

速水さんがマヤ本人の訴えを信じなかった・・・という、ちょっと信じられないこの事件ですが。もしこれ、速水さんでなく桜小路君だったら、どう対応しただろうかと考えてみました。

例えばですが、紫織さんが偶々、桜小路君の舞台を見て彼を気に入り、強引に婚約へ持ち込んだとしたら、です。最初は相手にしなかったであろう桜小路君ですが、鷹宮のバックアップがあれば今後の演劇人生に必ずやプラスとなると踏んだ家族の猛プッシュ(もちろん、紫織さんの家族懐柔策もあり)と、どの道この先マヤちゃんとは結ばれないという悲観が、桜小路君をして、紫織さんとの婚約受け入れ→結婚に突き進むという行動に走らせたら。

桜小路君の弱みは、いまだマヤちゃんへの消えない思い。決して嫌いになったわけでなく、どれほどアタックしても答えてはもらえない、マヤちゃんの胸を占める紫のバラの人への敗北感・・・です。

婚約者となり有頂天の紫織さんが、もしも桜小路君の携帯待ち受けに、マヤの画像を発見したら。大切にしまわれた、イルカネックレスの秘密に気付いたら。桜小路君の心を自分だけのものにしようと、あのドレス&指輪事件をおこしたら、彼はどんな反応を示したでしょうか。

ちょっと考えただけで、すぐに答えが想像できました。
たぶん、こんな風になったんじゃないかと思います。ドレスの試着室から聞こえてきた、紫織さんの悲鳴。慌てて飛び込んだ桜小路君の目に映る、マヤを疑っても仕方のない情景。
以下、桜小路君が速水さんの立場だったら、を予想して書いてみた文章です。

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桜小路:どうしたの・・・マヤちゃん。こんなところで一体なにを?

紫織:(白いドレスがブルーベリージュースで染まり、無残な有様。両手で顔を覆い嗚咽をもらすばかり)

桜小路:(紫織ではなく、まっすぐにマヤをみつめている)
言ってよ。紫織さんになにを・・・したの・・・?

マヤ:(真っ青な顔で唇を震わせている。力の抜けた手からバッグが滑り落ち、中身がこぼれる。床に転がる大きな指輪を見て、試着室にいたスタッフたちがどよめく。)

桜小路:これは・・・僕が紫織さんに贈った婚約指輪。どうしてこんなところに? マヤちゃん、これはいったいどういうことなんだ・・?

マヤ:知らない! あたしだって・・・! いつのまにか あたしのバッグの中にはいっていたの! だからそれを返そうと思ってきょうここへ・・・!

桜小路:(なにも言わず、マヤをみつめている)

マヤ:(泣きそうになりながら、桜小路をまっすぐに見ている)

桜小路:君を・・・信じるよ。後は僕にまかせて。もう、行ったほうがいい。

マヤ:桜小路君、でも・・・。
(青ざめて、立ち尽くすマヤ)

桜小路:(マヤに近寄り、優しく肩を押す)
大丈夫だから。心配しなくていいから。
(安心させるように、笑顔をみせる)

マヤ:(ふらふらと、おぼつかない足取りで部屋を出ていく)

桜小路:(なにがあったのかはわからないけど・・・。ともかく、マヤちゃんは紫織さんに意地悪をするような子じゃない。きっとなにか、誤解があったんだろう。マヤちゃん真っ青だったな・・・。送っていってやりたいけど、こんな状態の紫織さんを置き去りにするわけにはいかない。)

紫織:(桜小路にすがりついて泣き出す)
やっぱり盗んだのはマヤさんだったんだわ。なくしたはずのあの指輪・・・。わたくしのドレスに、ジュースをかけたのもあの子・・・どうしましょう、こんなに汚れてしまって・・・。

桜小路:なにか誤解があったんですよ。マヤちゃんにはあらためて、事情を聞いておきますから。でも、信じてほしいんです。マヤちゃんはなにがあっても、紫織さんにひどいことをするような子じゃないんです。

紫織:ひどい・・・マヤさんをかばうのですか?

桜小路:僕が一番・・・よく知っているんです。マヤちゃんとは長いつきあいだから。そんな子じゃないんです、本当に。演劇以外のことじゃまるで不器用だけど・・・でも。

(そうさ、マヤちゃんのことなら、僕が一番よくわかってる。紫のバラの人には勝てないと悟って、紫織さんとの婚約に踏み切ったものの・・・。ああやっぱり君を見ると胸が痛いよ。どんな状況であれ、君に会えたことを喜んでいる。僕は・・・本当に君が好きだから。他の女性と婚約すれば、忘れられるとおもったのに・・・。紫織さんは、僕には申し訳ないほどの素晴らしい女性だ。なのにどうして・・・僕は・・・)

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>マヤ:知らない! あたしだって・・・! いつのまにか あたしのバッグの中にはいっていたの! だからそれを返そうと思ってきょうここへ・・・!

注) この部分については、コミックスの台詞を桜小路君用に、改変して使いました。コミックスだと速水さん相手なので、敬語使ってますね。

もし桜小路君があの場所にいて速水さんの立場だったら・・ということで、上記を想像してみました。全くの想像ですが・・・桜小路君はマヤのこと、きっと信じるだろうなと。

紫織さんにどうこう言われようと、周囲の状況がどんなに疑わしいものであろうと、マヤ本人の口から「違う」と聞けば、それを信じて受けとめるのが桜小路君だろうなあと思いました。

紫織さんが罠を仕掛けても、無駄でしょうね。
心の底から、マヤという人間を信頼していると思うから。そしてその信頼は、たとえマヤへの気持ちが所詮報われない一方的な思いであっても、変わらないと思うんですよね。振れ幅がないというか。
誰かがマヤの悪口を言ったとしても、桜小路君は動じないと思う。自分の目で見た、自分が好きになった人物を信じるから。

じゃあどうして速水さんは、マヤを疑ったのか。
うーん、それは、つきつめて考えていくと、彼は自分自身を、心の奥底では卑下している部分があるんじゃないのか?なんて思います。どんなに他人が評価してくれても、自分が自分のことを信じていないような。だからその気持ちが、不安感になるんじゃないかな。

あの子がおれを好きになるはずはない。
おれはあの子に憎まれて当然だ。

こういう自己否定の結論にたどり着くのは。自分自身が、自分を価値のない人間だと思いこんでいるからかもしれません。

子供の頃の誘拐事件。英介に見捨てられたときの絶望が、「自分は愛されない人間だ」という、強いマイナスイメージを、潜在意識に刷りこんだ。

唯一、自分を無条件に愛してくれたであろう母親に対しても。その死因が紅天女(燃え盛る屋敷に飛びこんで行ったときに負った怪我が遠因)であることに対しては、わだかまりがあったと思うのです。

母さんは、僕よりも紅天女が大事なの?と。
母さんになにかあれば、僕はあの屋敷で血のつながらない義父と二人きりになるのに。
それでもあの英介の、ご機嫌をとりたかったの?と。

そして、そんな母親を救えなかった、無力な自分への怒り。
自分さえしっかりしていたら、母親を支えることができたら、母はあの英介に媚びる必要もなく、二人の生活は英介のお情けにすがることもなかったのに・・・。

復讐心を生きる糧として成長した速水さんですが、自己否定の気持ちは、相当強かったのではないかと。

英介にも愛されなかった。母も、英介の紅天女に媚びて死んだ。自分を心から思ってくれる人など誰もいない。
いや、母は英介に媚びたのではなく、英介の機嫌を損ねなければ、速水家での真澄の立場が保障されると信じての行動だったかもしれないけれど・・・。そうだとしたら、母親をそんな行動に走らせたのは、自分がふがいないからで。そして、死んだ母に対し、やりきれない思いを抱いてしまう自分が、そんな自分こそが許せなくて。

心の奥底に、強い自己否定の気持ちがあるからこそ、指輪事件でマヤを疑ってしまったのが速水さんなのかもしれませんね。こんな自分など、憎まれて当然なのだと。

桜小路君は対照的です。暖かい家庭に育ち、きっとあふれるほどの愛情を受けて育った。演劇の世界でも、それほどの挫折を味わうことなく順調にやってきたはず。自分を否定する要素などなにもない。

だからこそ、自分の愛した人を、マヤちゃんを素直に信じられるのかもしれません。自分という人間を、信じているから。

速水さんはきっと、自分自身を信じていないのでしょう。そう思いました。

『ガラスの仮面』の指輪事件

『ガラスの仮面』の、指輪事件について語ります。ネタバレ含んでおりますので、漫画を未読の方はご注意ください。

指輪事件。
私が何を一番、アリエナイと思ったかというと、マヤが速水さんの目の前で否定したのにも関わらず、速水さんがマヤを疑った、というところです。

これだけは有り得ない。速水さんが魂のかたわれであるなら、この展開だけはありえませんでした。
じゃあどういう展開だったらよかったのかなあと考えたのですが。

紫織さんがマヤのいないところで、あることないこと速水さんに吹き込む、的な設定だったら、速水さんのキャラも崩壊しなかったと思うんです。速水さんがあの、ウェディングドレスの試着室に現れず、マヤのバッグから指輪が飛び出すのを自ら目撃しなければ。たとえば、下記のような感じで。

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(鷹宮邸。紫織が体調を崩したとの連絡を受け、真澄が見舞いに訪れる。真澄は紫織とマヤにトラブルがあったとは聞いているが、現場にはおらず、詳細を知らない。)

紫織:指輪を盗ったのは、やはりマヤさんでした。マヤさんがバッグを落として・・・そこから指輪が出てきたんです。その瞬間、マヤさんがグラスも落としてわたくしのウェディングドレスは滅茶苦茶に・・・。あの子は、真澄さまの何なんですの?わたくしにはわかりません。

速水:申し訳ないことをしました。僕がその場にいればよかったのですが、まさかそんなことがあったとは・・・
(白目になり、考えこむ)

(あの子がそんなことをするとは信じられん。だが、もしそんなことがあったとしたらその理由は一つだ。
マヤ、おれがそれほど憎かったのか。おれではなく紫織さんを標的にするほど、おれが憎いか?
許されようなどと、思ってはいない。だが君の心に憎しみ以外のものを感じたのは、おれの勘違いだったのだろうか)

紫織:(真澄さま、あの子を信じるおつもり?そうはさせないわ)
わたくし、マヤさんが怖い・・・。あの子の目には憎しみがありました。真澄さまとあの子の間には、なにがあったんですの?

速水:・・・・・・
(一瞬でも、夢をみたおれが馬鹿だったのだ。あの子がおれを、憎んでいないはずがない)

(いつかのマヤの言葉が蘇る)

「さぞ満足でしょう・・・これでいつか 鷹通のすべてを手に入れるチャンスをつかんだってわけですね・・・!」
「あなたみたいなひとに『紅天女』は渡さない・・・!ぜったいに・・・!」

(そうだ・・・あの子が変わったんじゃない。馬鹿な夢をみたのはおれの方で・・・ずっと憎まれていたのに。人に嫌がらせをするなんて、したこともないようなあの子が・・・罪を犯してまで紫織さんを・・・。おれが鷹通と縁組すれば、力を得た大都が紅天女を奪い取るとでも思いつめたのだろうか。馬鹿な。今マヤが下手なことをすれば、試演に出るチャンスさえ失うというのに。自分の立ち位置すら見失って、それほどまでに、おれを恨んでいるのか)

速水:紫織さん。すべて僕の責任です。

紫織:真澄さま、この先もあの子は・・・・

速水:(フッと自虐の笑みを浮かべる)
いいえ。あなたが心配するようなことはなにもありません。それより、結婚の時期を早めませんか。僕は早く、あなたと一緒になりたいのです。

(マヤに馬鹿な真似をさせるわけにはいかない。おれへの憎しみが、あの子の未来を傷つけるようなことなど、あってはならない。マヤ、おれのために自分を貶めるなんて・・・。一刻も早く紫織さんと結婚しよう。そうなればあの子も、それ以上の行動には出ない。)

紫織:(顔を赤らめる)
紫織は・・・真澄さまがいてくだされば怖くありません。
(やったわ。あの子が指輪を盗み、わたくしのドレスを汚す嫌がらせをしたと信じて、愛想を尽かしたのね。思った以上にうまくいったわ。結婚を早めるとまで言って下さった。これで真澄さまはもう、わたくしだけのもの・・・フフフ)

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上記のような感じだったら、指輪事件も、物語を盛り上げる重要なエピソードになったと思うのですが。
要は、速水さんの罪悪感があまりにも深すぎて、そのフィルターを通して物事を考えるものだから、あっさり紫織さんの姦計に陥っちゃうんですよね。「おれは憎まれてる」という固定観念から、自由になれない・・・。

☆で囲まれた文章は、私が勝手に想像した二次創作ですが、

>「さぞ満足でしょう・・・これでいつか 鷹通のすべてを手に入れるチャンスをつかんだってわけですね・・・!」
>「あなたみたいなひとに『紅天女』は渡さない・・・!ぜったいに・・・!」

この辺の台詞は、実際にマヤが速水さんに言い放ってます。コミックスの45巻です。

マヤ、結構キツいこと言ってるなあ(^^;

あの指輪事件。マヤがいない席で紫織さんからあれこれ訴えられたら、きっと速水さんも紫織さんの言うことを信じてしまうだろうなあって思ったんですよね。
なにしろ、「憎まれてる」と思いこんでますから。
マヤがそんなにもひどいことをした→全部おれのせい、みたいな。

マヤが目の前で否定したのに、それを信じない速水さんは非道(というか絶対に魂のかたわれではない)ですが、マヤ本人から否定の言葉を聞いていない状態で、その悪行を信じてしまうというのは、なんとも切ないエピソードになると思うのです。

噛み合わない歯車。
一瞬心が通じたように見えても。
二人の間にある、深い谷間。

おれなんかを好きになってくれるわけがない。
あたしなんかを好きになってくれるわけがない。

延々続くループ。それを象徴するエピソードに、なり得たのではないでしょうか、指輪事件。

でも・・・重ねて言いますが、マヤ本人が目の前で否定しているのに、それを信じない速水さんは・・・どうかと思います。

作品「A」

 最近、私の中の『ガラスの仮面』熱が高まっております。 それで二次創作、パロディのHPにもお邪魔させていただいているのですが、皆さん凄いですね。二次創作サイトの数自体も多いけど、質が高くて、ひしひしと原作への愛が伝わってきます。

 愛されてますね。速水さんとマヤちゃん。
 もうキャラが独立して、歩き始めてるんですね。

 私が夢中になってるサイトは2つあります。それでさっき、中でも私が大好きな作家さん(この方はもはや素人ではなく、プロの域)が作品「A」(本当のタイトルは出せないので、仮にAとします)を更新されてて、待ってましたと飛びつくように読んだんですけど、泣けました。

 感動して泣くのって、自分でも驚きました。
 そんなに長いお話じゃないんですけど、その一部を読んだだけで。涙がブワーっとあふれてきて。
 

 泣くつもりないのに、気付いたら涙がつつーと。涙と鼻水でエラいことになったので、しばらくティッシュと格闘して。なんとか今、落ち着いてます。それで、私もブログを更新したくなりました。

 「愛」について語りたくなったのです。陳腐だけど。
 それがどんな作品か、ここで具体的に作品名とか紹介せずに解説するのもどうかと思ったんですけど、でも語りたいんで、語っちゃいます。作品「A」を読んで思ったことなど。

 速水さんって、愛の権化なんですね。愛を人間にして、服着せてみましたらこんなん出ましたけど、みたいな。
 それで、愛にあふれてて、優しいんだけどその優しさはちゃんと、強さを伴った優しさで。

 上っ面じゃなくて、本当にマヤちゃんのこと愛してるんだなあって。そういうのに触れると、なんか泣けてきませんか。真摯な愛情、純粋な愛情って、別に自分に関係なくても、それを見ただけで泣けるもんなんだなあと実感したのです。

 なんだろう。心の奥に響いてくるものがあるというか。
 圧倒的な愛を感じると、感動します。

 やっぱり、速水さんに比べたら全然、マヤは子供で。愛情の深さも、天と地ほどの差がある、と思いました。もちろん、マヤがマヤなりに恋してるのも惹かれてるのもわかってますが、速水さんがマヤちゃんを想うのって、それを遥かに凌駕してると思います。

 たとえばもし、速水さんがマヤを失ったら。それがどういう形であれ、彼は、廃人(言葉は悪いけど)になるだろうと、それが容易に想像できてしまう。そこには喜びもないし、未来もないし。マヤの代替の人間なんて思いつかない。速水さんにとって唯一無二の存在がマヤで。
 そしてそんな速水さんに気付かないのが、マヤの天然たる所以であり、魅力なのだなあと。

 マヤは全然わかってない。
 どんなに速水さんがマヤを恐れ、慈しみ、崇めるようにしてその微妙な距離を保ってきたか。

 速水さんは基本クールで大人で、普段は余裕かましてますが(笑)、本当はマヤの前ではいつだって完敗で、汗ばんでるんですよね。緊張して不安で、どう振る舞うべきかいつも迷って。
 怯えてるといってもいい。マヤを失うのを恐れてる。やっと手に入れた魂のかたわれが、離れて行ってしまうことを。嫌われて、拒絶されて、二度と手の届かない場所に行ってしまったら、きっと速水さんは狂ってしまう。

 一方マヤは。
 ぜーんぜんそんなの、わかってないと思う。
 「私の方が速水さんを好き。速水さんは大人だから、私なんて相手にしてくれないだろうな。きっと速水さんの周りには、私よりもずっと速水さんにふさわしい、きれいな相手がたくさんいて」なんて、それなりに可愛い嫉妬をしているんだろうけど。

 案外、速水さんを失っても大丈夫じゃないかと。
 

 これは作品「A」を読んだから、というわけでなく、原作を読んでいたときにも思ったのですが、マヤは速水さんを失っても、ちゃんと立ち直るはず。それだけの強さをもっているし、なんていうか、速水さんへの思いは、そこまで絶対的なものではないと感じるんですよね。
 速水さんがどれだけ深くマヤを愛しているかというのを考えたときに、マヤ→速水さんの思いの量など、たいしたことないんじゃないかって思える。

 私が作品「A」を読み終えたとき。
 頭の中で、My Little Loverの『DESTINY』、その一節が鳴り響きました。

>アイシテル 愛している ただその言葉だけで

 愛という言葉は陳腐かもしれないけど、つきつめれば、最後に残るのは愛なんだなあと、そう思ったのです。
 誰かを好きになって、それは最初は恋かもしれなくて。

 でも本当にその人を心から、存在丸ごと、魂のかたわれレベルで愛したら。語る言葉はもう、「愛してる」しかないんですね。

 この気持ちを、あふれる思いを。もうどう表現したらいいのかっていう。そしたら最後には、「愛してる」しかなくて。
 それ言ったからどうだってことじゃないんですけど、もう言わずにはいられない瞬間があるっていうか。ただ目の前の存在が愛しくて愛しくて、感情が自然にあふれ出して、相手に伝えてるんだか、自分に確認してるんだか、その区別もつかないけどとにかく、「愛してる」って言葉が出てきちゃうわけです。

 作品「A」の速水さんはとにかく優しくて。
 マヤを傷つけないようにっていう気遣いがよけい、泣けました。

 もう、見ててマヤに説教したくなりましたもん。

 マヤちゃん、あなたぜんっぜんわかってない!
 速水さんがどれだけあなたを大切に思ってることか!!

 いや、理不尽な説教ですけども(^^:
 そんなこと言われてもマヤちゃん、ぽかーんだろうし。
 そんな邪魔者が現れたら、即効で速水さんが退去させるだろうけど。

 愛してるって、いいですね。本当に、そう思いました。