『偽眼のマドンナ』渡辺啓助 著

『偽眼のマドンナ』渡辺啓助 著を読みました。以下、感想を書いていますが、ネタばれしていますので、未読の方はご注意ください。

短編なのですが、とても雰囲気のある小説です。

1900年代のある日、秋のセエヌ川をボートで下る2人の青年。陽気な医学生の林と、陰気な画家である「私」。

なんの気なしに、街端れの支流へ舵先を向けた「私」は、水際に降りる石段の上で、膝を抱いて座っている女に一目惚れします。

そこは、娼家の並ぶ裏通りでした。片目のマッテオと呼ばれる女性を、やっと探し当てた「私」ですが、「私」の熱情は拒絶されます。

そのときの二人のやりとりが、とても美しいのです。

おそらく、「私」がその瞬間、本当に恋に落ちたのは、確かなのでしょう。その後、心変わりするかどうかはともかく、「私」は画家として、魂の震える相手に出会った。

けれど、「私」の心からのプロポーズを冷たく拒むマッテオの、その気持ちも読者には痛いほど伝わってくるのです。

>「あたしには、泣いたっていい想い出が沢山あるんだよ」

この一言が、ずしりと響きました。

闇の中。窓の向こうに広がる薄明かりや、外から聞こえる酔客の声。この小説からは、その空気が伝わってくるのです。そして、異国の、通りすがりの男から突然求婚された彼女の、戸惑いとかすかな喜びと、それ以上に深く圧倒的な、悲しみと。

彼女にとっては、この小さな部屋がすべて。それ以下でも、それ以上でもない。

夕暮れ時、ゆっくりと流れる川岸に膝を抱えて、彼女は何を思っていたのでしょうか。その時間だけは、きっと彼女は自由だった。誰からも、なにからも縛られないで。

彼女の過去が、「私」を魅了したのだと思います。

それは、「偽眼」という表現をされていましたが。本当はそんな物質的なものではなかったのではないかと、そんな気がするのです。

絵が完成するまでの間、彼女は「私」と一緒に暮らし、そして黙って、林と一緒に街を去っていきます。

「私」は、彼女が林と出て行った理由を、林が裕福な好男子だからと決め付けていますが、私にはそうは思えません。モデルをしていれば、「私」がいかに真剣な気持ちだったか、彼女には伝わったと思うからです。マッテオを見つめる目の力や、絵筆を走らせる手の動きや、屋根裏を満たした熱い空気を、肌で感じたでしょう。

そのとき、「私」にとってマッテオは美の極致で、まさにマドンナだったわけです。

マッテオの過去になにがあったかはわかりませんが、マッテオはきっと知っていたのだと思います。どんなに激しい愛情も、いつか冷めるときがくる。人の心は変わってしまうと。

だから、マッテオは消えた。

一番いい、思い出のままで。

林じゃなくても、連れ出してくれるなら誰でもよかったのだと思います。きっとマッテオは、その先に希望がないことも知っていたはずです。でも、ともかくそこを去ることが、彼女の最後の希望だったのでしょう。

異国の絵描きの記憶の中で、いつまでもマドンナだったマッテオは輝くから。

その後、取り残された「私」は偽眼に執着し続けますが。

これ、結局は、眼じゃないだろうなあと思いながら読んでました。「眼」を追い求める自分を、まるで狂人のように自嘲するような文章でしたが。

マッテオそのものに、焦がれてたんですね。マッテオをわかりやすく具象化したものが、眼だっただけで。もう会えないと知ればよけいに、会いたくなる。マッテオを表すものがほしくなる。

せつない話だなあ、と思いながら読みました。二人の気持ちは、微妙にすれ違っていたような。

マッテオの美は、きっと「私」にとっての極致で。それは、他の人にはわからないかもしれないけれど、もうどうしようもない、強力な圧倒的な美で。

どうしてこの魅力にとりつかれてしまった気持ちを、彼女はわかってくれないんだろうかと・・・「私」のもどかしい気持ちが、伝わってくるのです。

そして、マッテオの気持ちもわかる。彼女はとても、惨めで、最低で、でも少しだけ、嬉しかったんだと思う。

彼女が「私」からプロポーズを受けたとき、彼女はひどい言葉をいくつも口にするのだけれど、そのどれもがとても痛くて、そして本当はひどく、優しいのだ。

その向こうに、彼女の過去がぼんやりと透けて見える。

この小説の最後、紳士の言葉をどう受けとめるか、読者の数だけ解釈はあるのでしょう。果たして、これは創作なのか、真実なのか。

私は、その紳士が「私」自身で、真実だったのだと、そう思っています。そう捉えるのは、少数派なのかもしれませんね。

『breaking dawn』Stephenie Meyer 著

Stephenie Meyer 著『breaking dawn』を読みました。以下、感想をかいていますが、ネタバレしていますので、未読の方はご注意ください。一部、原文をそのまま引用した箇所がありますが、訳は自分がつけているので、少し変なところがあるかもしれません。ご了承ください。

大好きなトワイライトシリーズの第四弾。ということで、期待に胸をふくらませながら読んだのだが、読了するのにこの巻だけものすごく時間がかかったのには、理由がある。それは、半ばまで読んだところで、興味をなくしてしまったからなのだ。あまりにも主人公のベラの態度がひどすぎて。

もう、そんなベラにベタ惚れなエドワードも、ひどい仕打ちをむしろ楽しんでいるんじゃないかとさえ思えるジェイコブも、どうにでも勝手にしてくださいという気持ちになり、しばらくこの本に手をつけないまま放置していたのである。続きを読むのが苦痛になってしまって。

このブログに以前、斉藤由貴さんの『かなしいことり』の話をのせたのは、ベラと、あの曲に登場する女性の共通点を、ふと思い浮かべたからだったりする。

どちらも身勝手な女性ではあり。(自分の気持ちに正直ではあるけれど)自分がされたら絶対泣くだろうなあという残酷な仕打ちを、わりと淡々とやってしまうところがすごいなあと。

『breaking dawn』は夜明けという意味で。めでたく?エドワードの手によって吸血鬼になったベラの、「はじめての吸血鬼日記」だなあと思いました。英語のタイトルのセンスは抜群。第四巻に至るまで、なるほどーと感心させられます。

この巻で、エドワードと結婚したベラはプライベートアイランドで新婚旅行を楽しむのですが、ここはうっとりでした。そうそう。やっぱり二人っきりがいいよねーという。南の島で二人きりという状況は、まさに天国。

夜の海の描写。月を見上げてる、真夜中のエドワードの後ろ姿とか、絵画的でしたね。

ただ、物語はここで終わったほうが美しかったのかも・・と思わなくもないのです。

結婚はしたけれど、まだ吸血鬼にはなっていないベラ。そこで終わらせていたほうが、せつなくてよかったなー、なんて思ってしまいました。

吸血鬼と人間の圧倒的な力の差から、心ならずもベラの体を傷つけてしまったエドワードの苦悩とか、そのへんのシーンは照れながらも楽しく読んでいたのです。が・・・。

子供ができた、という展開から、???の連続でした。

そもそも、無計画すぎるというか、エドワードもベラも、なにを考えているんだろう?という。

それに、話が生臭くなりすぎというか、おとぎ話的な感じで読んでいたところに、いきなり現実的な話になってきて、え?え?という。

子供って、やっぱり愛だの恋だのとかいう、うわっついた話とはまた別の、責任がかかってくる話ですもんね。自分たちさえよければ、という次元とはまた別だし。

それで、そこからのベラの行動がなんとも、私には理解しがたいもので。

完全に、「こりゃもう無理。これ以上読めない」と本を放り出したのは、ジェイコブの目の前で、ベラとエドワードがお腹の赤ちゃんのことで盛り上がるシーンです。

死に瀕したベラのため、、プライドも嫉妬もかなぐり捨てて「ベラの傍にいてやってほしい。ベラの望みをなんでも叶えてやってほしい」とジェイコブに頼みこんだエドワード。

ベラへの想いが強すぎるため、仲間と絶縁してまでベラと一緒にいることを選んだジェイコブ。

そのジェイコブの目の前で、「赤ちゃんが今、こんなこと思ってるよ♪」「赤ちゃんの名前はこうしようね♪」と盛り上がる二人。これはキツイ。キツすぎます。ジェイコブにとって、あんまりすぎる状況です。どうしろっていうんだろう。

>In that moment, I knew that I was alone. All alone.

(そのとき、自分は一人ぼっちだった。独りきりだった。)

ジェイコブの慟哭が聞こえてくるようです。強烈な疎外感。じゃあなぜ俺を呼んだのさ?っていう叫び。

これを読んだとき、もう私はいたたまれなくなってしまって。

だって、ベラはエドワードが好き。エドワードもベラが好き。二人は結婚しました。仲良しです。子供が生まれます。幸せです。

そこにジェイコブが入る隙間なんて、ひとっつもないわけですよ。彼だって、そんなことはよくわかってる。なのに、ベラはジェイコブに「そばにいてほしい」って言う。親友だって言う。

ベラが死ぬかもしれないと知り、動揺するジェイコブの心の隙間につけこむような、卑怯な願いだと思いました。死ぬかもしれない人の願いだから、なんでも許されるのか?

そしてジェイコブの目の前でいちゃつく、幸せな新婚カップル・・・。

ジェイコブはたまらず駆け出しますが(無理もない)、その彼に、咄嗟に車のキーを投げるエドワードはまだ優しいのかも。

エドワードのことは・・・。エドワードも、被害者なのかなあって思うから憎めない。ベラのことが好きすぎるんでしょう。内心はジェイコブに同情してると思います。ベラがジェイコムに望んでいるのは、あまりにも非常識で残酷なことだから。

ベラの傍にジェイコムを呼び寄せることは、エドワードだって嫌なはず。同志的な目で、きっとジェイコムを見てるんだろうなあ。同じ女性に囚われてしまって、もう身動きとれなくなった者同士で。

ああ、もうこの3人。勝手にしてくれ。と、ここまで読んで、私は本を閉じてしまいました。しばらくは、続きを読む気になれなかった。あんまりな展開だったから。

とはいえ。せっかく3巻までは読んだのだし、途中でやめるというのはすっきりしないので。結局どんな結末を迎えたのかだけは確かめたいと思い、気持ちが落ち着いた頃にまた、続きを読み始めたのですが。

もう、『twilight』『new moon』『eclipse』で感じたあの、ドキドキ感は全く感じなくなっていました。

ベラはやっぱり、ベラでした。

その後も、さすがベラ・・・と思うエピソードがたくさん。

たとえば、ジェイコブから、自分の子供が運命の相手だと聞かされたときの反応とか。

ジェイコブに対して怒るベラ。うーん、でも、自分だって、エドワードとは運命の相手だったわけよね。周りがどんなに反対しても、どうしようもなく惹かれ合ったし、理屈じゃない結びつきの強さ、抗えなさっていうのは、身をもって知ってるはずなのにどういうこと?という。

それに、ジェイコブには返しきれない恩があるのでは? その恩人に対する対応じゃなかったと思う。

それから、ジェイコブと娘を、万一のときには逃がそうとこっそり手配するところとか。

あれ? 逃げ切れないからこそ、ヴォルトゥーリ一族と対決するんじゃなかったっけ? ジェイコブと2人なら逃げ切れるって、どこからその発想が出てくるんだろう。あまりに単純すぎないか?という。

この4巻で、一番心に響いたシーンはどこかというと、ベラがエドワードに秘密裏に行動した後、家に帰ってくる場面の描写ですね。

長らくピアノに触れていなかったエドワードが、どんな思いでピアノを弾きながらベラの帰りを待ったのだろう、と。いろんな思いがあったでしょうが、ともかくエドワードは優しい。その優しさは、もはや夫というよりも幼子を守る親に近いのかも。大切に大切に。決して傷つかないように。

ベラのためなら、見えていることも見えないふり。知っていることも知らないふり。それが彼女の望みなら。

そしてエドワードはピアノを弾くのです。そうすることで自分を表現したかったのかなあって。

こんなに愛してる。いつまでも待ってるって。

私がエドワードなら、ベラを問い詰めちゃったかもしれない。少なくとも、真実を知りたがっただろうし、それを隠したベラには不信感を抱いたと思う。

でもエドワードは違うんだな。ピアノを弾いて静かに帰りを待つ、という。その音が、ベラの耳に届くことを信じてるから。

巻末の終わり方が、意味深だなあと思いました。

今までベラの心の声だけは、どうしても読み取れなかったエドワードに、初めて心の声を聞かせるベラですが。彼は途中でベラにじゃれかかって、最後まで聞こうとしませんでした。

これねえ。エドワードは、わかっちゃったんだと思うなあ。

結局、自分の方がよほど、ベラを好きだってことに。だから、それ以上聞く必要がなかったんだと思う。もう、そんなもの聞いてもどうしようもないもんね。それほど深い思考を、ベラが持ってるとは思えないし。

ああ、やっぱりね。これがベラの心だったんだなあっていう。妙な感慨はあったと思います。どうしてもどうしても聞きたかった、愛しい人の心の声は、実際に聞いてみたら、ああ、なあんだ、こんなものかっていう。

聞こえないからこそ、神秘化された部分は大きかったと思うので。不安にもなったし、彼女が不可解な存在にも思えただろうけど。

知ることができないからこそよけいに、狂おしく思えた部分も、あったんだろうなあ。

というわけで、twilightシリーズをすべて読み終わりました。

前の3巻と比べてこの最終巻は、パワーが違うというか、物語の軸が、別方向に向かっているように感じてしまいました。

『eclipse』Stephenie Meyer著 その2

昨日の続きです。『eclipse』Stephenie Meyer著 の感想ですが、ネタバレ含みますので未読の方はご注意ください。

なお、英語は原文のまま載せていますが、併記した日本語訳は自分でやっているので、多少変なところもあると思います。ご了承ください。

一番ぐっときたシーンは、ジェイコブを傷つけたといって自分自身を責めるベラを見かねたエドワード。戦闘前の、本来ならそれどころではないタイミングで、無理を承知でエドワードがジェイコブを迎えにいき、ベラに会わせる場面です。

もうね、そこまでしなくていいのに・・・って。十分すぎるほどエドワードは、やってあげてるのにって。この上まだ、ベラのために自分を犠牲にするの?って思いました。

ベラを置き去りにした負い目や、ジェイコブが傍にいるのを知りながら、彼に自分たちの甘い会話を聞かせた負い目があるとしても、です。

もう命がけですもん。

本当なら、ベラがめそめそ泣いてる場合じゃないというか、駄々こねてる場合じゃないんです。全部終わってから、ゆっくりジェイコブには償えばいいわけで。

というか、そもそもベラがエドワードを選んだ時点で、十分ジェイコブは傷ついてるんだから。もう放っておいてあげるのが優しさなんじゃないかと。

エドワードはその点、わかっていたような気がします。いつまでも夢をみさせておくほうが、残酷なんだってこと。だから、傍にジェイコブがいることを知りながら、わざと会話を続けた。そして、ジェイコブに引導を渡したんですよね。

自分たちは結婚すると。そして、ベラはエドワードの仲間になると。それが、ベラの意志なんだってこと。

少々荒療治かもしれませんが、いつかはわかることで。淡い期待をもたせるよりいっそ・・・と思ったのかもしれません。いくら偽りの仲良しごっこを続けたところで、終わりの日は見えているわけだから。ベラの甘さが余計なトラブルを招く元凶でしかないことが、エドワードにはお見通しだったはずです。

それでも、ベラの涙には勝てない、エドワードの誠実さに心を打たれました。惚れちゃったほうが負けなのね・・と。ベラが傷つくのを見るくらいなら、自分が傷ついたほうがましなんですね。けなげすぎる。なにが悲しくて恋敵を恋人の元に連れて来なくちゃいけないのか。そして、二人が、彼らだけで会話する場を設けてあげなくちゃいけないのか。

エドワードがこんな罰ゲームみたいなことをやらされるような、どんな悪いことをしたんだ??って思いました。

おまけにその後、ジェイコブとベラは、キスして愛を確認しあうという・・・。

エドワードの立場なし・・・。

さすがにエドワードに罪悪感を感じて、自己嫌悪を感じるベラですが。エドワードの態度は意外なものでした。

>You love him.

>He murmured gently.

>ジェイコブを愛してるんだね。

>彼は静かにつぶやいた。

怒らないんです。エドワード。

この巻で、エドワードの好感度は急上昇しました。

吸血鬼なのにモラルがある、というか、古風なところがいいです。

ベラに贈った指輪が、両親の結婚のときのものだったというのが素敵です。買ったものより、心がこもっている気がしました。本当に大切な人にしか、渡さないだろうから。

ずっと独りだったエドワードが、初めて心を許した相手。

それと、感動したのがプロポーズ。

片膝ついてのプロポーズって、憧れです。こういうのっていいなあ。きっと、結婚すればいろんなことがあるだろうけど。その始まりはやっぱり、きっちり決めてもらいたいものなのです。それは、お願いであってほしいなあと。「結婚してください」ってね。「結婚しよう」じゃなく。

だって、Yes と答えた瞬間に、その女性は人生最高の味方になってくれるわけですよ。どんなときにも傍らにいて、もう一人の自分に等しい存在になって。同じ道を歩いていく。

親より兄妹より友人より子供より。ずっと長い時間を一緒に過ごす相手だから。心のすべてを明け渡す相手だからこそ、その始まりは、こうであってほしいなあと。

タイトルの eclipse(月蝕)ですが。

文中でジェイコブがずばり、こう言ってましたね。

>The clouds I can handle.

>But I can’t fight with an eclipse

>雲はどうにかできても

>月蝕にはお手上げだよ

月蝕。それはエドワードの不在を象徴するもの。

月の欠けた夜空の下では、ベラはもう生きていけない。きっと、ジェイコブは自嘲するように呟いたのでしょう。

この本の表紙の、ちぎれかけた赤いリボンの絵が印象的でした。センスがいいです。いろんなものを暗喩している気がする。

ベラとエドワードの絆。ベラとジェイコブの絆。そして、人間と吸血鬼。

綺麗なベルベットは、もしかしたらエドワードの心そのものなのかもしれない。二つにちぎれそうになって、かろうじてつながっている、そのギリギリのライン。

そうそう、タイトルが象徴するものといえば、私は以前、第2巻の『new moon』について、ベラにとってのエドワードが月だったのか?と書きましたけれど。『new moon』の中で、エドワード自身がこんなことを語っていました。

>Before you, Bella, my life was like a moonless night.

>ベラ、君に出会う前、僕の空には月がなかった。

続けて彼は、ベラを流星に例えます。そして、その光と美しさに目を焼かれて、自分にはもう、星のささやかな光が見えなくなったと告げるのです。

流星が地平線に沈んで後、今までと同じように星は光るけれど、流星の光を見てしまった自分には、もう星の光は見えないと。

そして、すべてが意味を失ってしまったと。

美しい表現ですね。

つまりnew moon は、ベラのいない夜空、エドワードの心象世界を表す言葉だったようです。

最後に、『eclipse』の中で一番好きなセリフを挙げておきます。

>You are my first priority.

>君が一番大切なんだ。

これ、日本語にするとあんまりピンときませんが、first priority という言葉の重さがいいんですよね。この一言の後ろに、エドワードの決意が感じられるから。きっとなにがあっても、どこにいても、ベラのためなら全てを犠牲にしてでも、駆けつけてくれる。最優先事項・・・って日本語直訳にしちゃうと、なんだかアレですが。

究極の殺し文句だと思いました。

最終巻となる第4巻『breaking dawn』を読み終えたら、また感想を書きます。

『eclipse』Stephenie Meyer 著 その1

『eclipse』Stephenie Meyer 著 を読みました。以下、感想を書いていますが、ネタバレを含んでおりますので、未読の方はご注意ください。

第1巻『new moon』や、第2巻『twilight』もそうだったんですが、後半の盛り上がりがすごかったです。主人公のベラが、吸血鬼と人狼の板ばさみになる状況が何度も繰り返されて、そのたびに、まるで我がことのように考えこんでしまいました。いったいどうすればよかったんだろう。なにが正解なんだろうって。

エドワードは大人ですね。さすが、百年以上生きている永遠の17歳。

ベラのピンチには絶対駆けつけてくれるし、ベラのためなら自分の感情を押し殺してでも彼女の望みを叶えようとするし。それでいて、結婚観は生真面目すぎて、ベラの情熱に流されることはないという。

正統派王子様ですね~。いやー、恵まれて育った王子様にはない行動力や勇気がある分、王子様以上の存在なのかも。そりゃ、ベラも惚れますね。

この二人の関係を見ていると、恋愛って不思議なものだなあと思います。たしかにエドワードは条件だけみても素敵な男性なんですけど、たぶんベラは、エドワードがエドワードだったから惹かれたんだろうなあって。読みすすめるほどに、それを感じるのです。

人狼族の言葉を借りるなら、imprint (刻印)の相手だということでしょうか。ジェイコブはそんなimprint についてこう説明しています。

>It’s not like love at first sight, really.

>It’s more like…gravity moves.

>When you see her, suddenly it’s not the earth holding you here anymore.

>She does.

>そうだな、一目ぼれなんていうもんじゃないんだよ。

>重力の移動、に近いかも。

>彼女を見た瞬間、地球の重力じゃなく、

>彼女にとらわれてしまうんだよ。

すごい表現ですよね。重力の中心が地球からその人に変わってしまう瞬間。全身の血が逆流する音が聞こえそうです。眩暈をおこすくらいの激しさ。それ以降は、なにもかもが違ってみえるでしょうね。

でもここらへんのジェイコブの語りも、実は含みをもったものじゃないかなーと、勝手に思っております。ジェイコブはベラに、一生懸命imprintの説明をしつつ、内心「わかってくれよー。まさにこれって僕が君に抱いている気持ちなんだけど」なんて、声にならない言葉で、訴えていたんじゃないかと。

しかしその後の会話で、ベラはあっさりと、ジェイコブにこんなセリフを言っちゃいます。

「あなたがそのimprint の相手に出会うのは、いつだと思う?」

いやー、ジェイコブが好きなのはベラなのですし。察してくださいって感じですね。ジェイコブの心の声は、「今目の前にいる君なんだよーー!!」と悲鳴をあげていたに違いありません。

ベラは少し鈍いというか、天然で残酷なところがあるので、エドワードとジェイコブを振り回しますね。読んでいて、オイオイ・・・(無言)・・・となる場面がいくつかありました。たとえばキャンプ地でエドワードと一夜を過ごす場面。

6月というのに季節外れの寒さ。寝袋の中で凍えているベラに、エドワードは為す術がありません。エドワードが近付けばもっと凍えてしまうから、彼は距離をおくことくらいしかできなくて。そこに颯爽と登場するジェイコブ。エドワードの気持ちなどまるで無視、さっさとベラの寝袋にすべりこみます。抗議するエドワードに、「(凍傷で)指をなくしたら、ベラはきっとお前さんに感謝するだろうね」とピシャリ。

エドワードが気の毒でした。自分の運命に苦い思いを抱いている彼なのに。自分にはない体温(温かさ)が、ジェイコブにはある。そのことを、こんなふうにみせつけることないじゃないかーと、最初はジェイコブを責めたい気持ちになったものの、いやいやこれって、元はといえばベラがはっきりしないせいだよなと。

ジェイコブの立場になってみれば、今までのベラの態度は非常に微妙なもので。エドワードが一番、エドワードを愛してるってことは確かに宣言していますけども、かといってベラは、ジェイコブを完全に拒んでいるわけではなく。気のある素振り(おそらくベラは親友として・・・と主張するでしょうが)を示しているから、ジェイコブとしても気持ちは揺れるわけで。

以前に変なメモというか、手紙みたいのを渡したのは人としてどうかなーと思いました。気持ちをふっきろうとしている相手に対して、惨いです。ジェイコブの手書きの返事を見ると、線を引いて消した文字に本音が表れているのがよくわかります。

消された文章で、まあ要するにジェイコブが何を言いたかったかというと、

>親経由で手紙寄こすなんて、小学生かよ!!

>俺が話をしたいと思ってたら、電話に出てるから。

>君は、俺じゃなく奴を選んだんだ。

>両方ってそりゃ無理だって。

>あんな奴のどこが・・・

>友達でいましょうって、そりゃ不可能。

>これ以上君のことを思うとつらいから、もう手紙は書かないで。

以上が、恐らく彼の本音。でもジェイコブはそんな思いを全部線で消した。

ベラに宛てた言葉は、こんな優しいもので。

>Year, I miss you, too. A lot.

>Doesn’t change anything. Sorry.

>そうだね、僕も君に会えなくて寂しいよ、とても。

>僕達の関係はなにも変わらない。ごめんね。

ジェイコブ、いい人だ・・・というか、気の毒だ(^^;

すっごく好きになった相手で、でもその人には恋人がいるんだからと。諦めよう、忘れようと必死になっているのに、離れたら急にその人がコンタクトとりたがって、親しい関係(でも恋人ではない。あくまで友達どまり)でいてくれと頼んでくるなんて。

追えば逃げて、逃げれば追う~♪ですかね。

頭の中では、CCBの曲が鳴り響いておりました。

しかしそんなジェイコブが凍えたベラの体を温めるのを、間近で見守らなくてはならないエドワードもかなーり、きつい立場だと思われます。私がエドワードなら、もういたたまれなくてその場を立ち去りたい。でも、自分にはベラを守るという責任があるわけで、もうこれは、引き裂かれるような思いでしょうね。どうしてこんなつらい光景を、目撃しなければならないの、という。

エドワードは、よかれと思ってしたこととはいえ、かつてベラを置き去りにしたという負い目があるので。こうした苦難にも耐え続けるんでしょうなあ。もう、けなげすぎて泣けます。

長くなりましたので、続きは後日。

『new moon』 Stephenie Meyer 著

『new moon』Stephenie Meyer著 を読みました。以下、感想を書いていますが、ネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください。

new moon。新月というタイトルが意味深でした。新月。真っ暗な空。月のない闇夜です。

ベラにとって、エドワードが月だったのでしょうか?

エドワードが去っていくという衝撃の展開が、この巻のキーポイントですね。エドワードがいなくなった世界から、月の優しい光が消えてしまった。

エドワードが好んで聴いていた曲は、ドビュッシーの「月の光」でした。いかにもエドワードらしいなあって、そう思いました。偶然にも、これはベラの好きな曲でもあり。そういう二人だからこそ、惹かれあったんでしょうけど。

私はベートーベンの『月光』の方が好きです。でもドビュッシーの曲も、可愛らしくて軽やかで、目の前に情景が浮かんできますね。明るい月夜。森の中。

太陽のように肌を焼く明るさではなくて。でも青白い光は十分に明るく、美しく辺りを照らし出して。静かに踊りだしたくなるような、楽しい曲です。きっとその月の光の中では、妖精の姿も見ることができるような。

エドワードにとっては、人間だった時代に太陽が必要だったように、今は月の光に安らぎを求めているのかなあと思いました。

ベートーベンの『月光』って、なんだか悲しいんですけど。でもドビュッシーの『月の光』は、希望がみえる曲だなあって思います。あんまり深いなにかを追い求めたりせずに、ただ今あるこの瞬間に、身を委ねている、みたいな。月の優しい光が自分を包んで、そして自分は焼けおちることもなく、光の中にいることを許されている、みたいな。

new moon の表紙に描かれているのは、赤い血を吸い上げたように染まった、白い一輪の花。

これがまた、秀逸なセンスだなあと思いました。元はきっと、触れるのがためらわれるような純白の花。それが赤に染まるのは、なにか痛みを連想させて、無残にも思えるのですが。

でももう、一度その赤に染まったならば。きっと元の白には戻れない。真っ赤に染まった小さな花びらのかけらが、はらりと落ちていくのも意味深ですね。

5月の、咲いたばかりのつつじの白さを思いました。なんの傷も、色あせもない。柔らかなその花の白さを。いつも、つつじの咲く頃になると、その無垢な白さに心を打たれます。交通量の多い、複数車線の道路に沿って。それでも黒い空気に染まることはなく、まるで今朝開いたばかりのような、曇りのない白さを保ち続けるつつじ。

この巻では、エドワードがベラの前から姿を消します。その別れはベラをひどく傷つけますが、だからこそベラは自分がどれだけエドワードを必要としていたか、やっと気付いたのではないかなあと思うのです。

それまでのベラは、エドワードがベラを思うよりはずっと、低い温度で彼を思っていたような気がするのです。たしかに幾度となく、エドワードを慕う描写は続きますけれど。それを読んでもなお、私の心にはあまり、響くものがありませんでした。

初めて誰かを好きになった、ふわふわとした陶酔感のようなもの。単純に楽しくて、うれしくて。そういう、無邪気な子どもが喜ぶような感情の高ぶりを感じたのです。

対するエドワードは、さすが長く生きているだけあってベラよりはもっと冷静に、二人の関係を捉えていたように思います。そして彼はたぶん、ベラが大事だからこそ、去っていったのですよね。別れに関して、本当のことをベラに話そうとはしなかったし、できるだけ冷たい態度で淡々と。

>Don’t do anthing reckless or stupid

(無茶なことや、馬鹿なことはしないでほしい)

最後に、お願いがあるんだと切り出して告げたのが、この言葉。

エドワードにしてみれば、すがるような思いだったに違いありません。むしろこの言葉を口にすることで、逆にベラがそういった行動に出てしまうのではないかという危惧は、当然あったはずで。

でも、この言葉を言わずにいられなかった気持ちも、よくわかるんです。もう見守ることはできないから、不安で、心配で。この言葉をかけずにいたら、きっと後悔しただろうから。

だからこの言葉を、できるだけなにげないことのように、切り出したんだと思います。本当はもう心から、真剣に頼みたいという気持ちを抑えて。

もし真剣さを悟られてしまったら、その向こうにある愛情をベラは、きっと見透かしてしまうでしょうから。

エドワードにとっては、精一杯の優しさ。

自分がひどい奴に思われたり、恨まれたりするのはちっとも構わなかったはず。

早く自分を忘れて、普通の生活を取り戻してほしいと、それだけを願っていたはず。自分が考えられる最良の別れを、演じきったんだと思います。

そしてベラは、演技の向こうの真実を、見ることができなかった。

ここから先、延々とエドワードが出てこないので、エドワードファンの私としては悲しかったです。私は心のどこかで、「エドワードがベラを本当に置いていくはずはない」と思っていたので、ベラが聞いた心の声は幻聴ではなく、なにかエドワードの特殊能力の賜物で、本当に彼が語りかけているものだと、すっかりそう思いこんで、本を読み進めていましたね。

実際には、本当にエドワードは、ベラとの関係を完全に断ち切っていたわけです。それがどれほどつらい努力だったか。きっとベラ以上に苦しんだだろうなあと思います。なにしろ、眠らない、記憶が薄れない、吸血鬼なんですから。

そしてベラにとって、エドワード不在の心の隙間を埋めてくれたのは、他でもないジェイコブその人。

しか~し。私はジェイコブの気持ちがよくわからないし、彼に対するベラの態度にも、疑問を感じるんですよね。

だって、つらかったベラを救ってくれたのはジェイコブで。

それなのに最後の最後で、エドワードが危ないと知ったとき、ベラはジェイコブの懇願にも関わらず、家を飛び出した。ジェイコブを置き去りにして。

この時点で、普通だったらもう、ジェイコブは呆れ果てると思うんですよね。まあ、呆れ果てるとまではいかなくても、思い知ることは確実で。ベラが好きなのは、自分じゃなくて、エドワードだってこと。そりゃ自分のことだって、好意を持ってはくれているだろうけど、もしこれが逆の立場だったらね。

つまり、ジェイコブが危険に晒されていて、エドワードが「行くな」ってとめたら、きっとベラはエドワードの言葉に従って、ジェイコブを助けに飛び出すことはないだろうと。

つまり、完全な失恋状態だと思うんですよ。本当に心から、「行かないでくれ」って頼んだのに、好きな人がその場からいなくなったら。私なら諦める。もう仕方ないやって思う。それはその人の意志だし、その人にとっては、自分よりも大切なものがあるんだって、思い知らされたから。

なのにジェイコブはベラに執着し続ける。このへん、私にはよくわからない心境です。

ジェイコブはなにを見ているんだろう・・・。

そしてベラね。

もし私がベラの立場なら、もう今さら、どの面さげて、「これからも仲良くしてね♪」みたいなことをジェイコブに言えるだろうって思うんですよ。

誰かを好きになる気持ちは自由になるものではないから、ベラがジェイコブでなくエドワードを選んだっていうのは、これはもう仕方のないことで。だったら、せめてジェイコブが傷つかないように。その傷が浅くすむようにって考えないのかなあ。

ジェイコムと友達でい続けることなんて、どう考えても無理。離れた方がお互いのためなのに、どうして無駄な傷を増やすようなことをするんだろうと。ベラって天然で、残酷な部分があるんだなあ。

それは、ベラのこの言葉を読んだときにも感じました。

>How can she watch those people file through to that hideous room

> and want to be a part of that?

最後のthatの部分が、イタリック体になって強調されてました。

これ、どんな状況かというとですね。人間でありながら吸血鬼のヴォルトゥーリ一族の元で働いている、ジャンナという女性がいるんですけども。この人は何も知らない人間達が、吸血鬼の食事として恐怖の部屋へ(何も知らずに)連れて来られるのを平気で見ているわけです。それでもって、自分もthat(その)仲間になりたいと願っていると。

それを知ったベラが、「理解できないわ・・・」とばかりに、このセリフを叫ぶわけです。

thatがなにを指すのかによって、解釈は2つあるような気がします。「吸血鬼の餌食になることも知らずに連れて来られた人間たち」か、「その人間たちを残酷に食らう吸血鬼」か。

前者なら、ジャンナは、いつの日か自分が吸血鬼の犠牲者になることを望んでいる、ということになるし、後者なら、自分自身が吸血鬼の仲間になることを望んでいる、ということで。

これ、正解はどっちなんだろう? まだ日本語訳を読んだことがないので、正解がどちらかわからないですが、私はとっさに、「吸血鬼になりたがっている」と解釈しました。

そしてもし、この解釈が合っていたら、ずいぶん残酷なことを、無邪気に口にしていることになるなあと。

だって、目の前にはエドワードがいて。エドワードは人間を襲ったりしませんが、それは理性で抑えているだけ。本質的には、ヴォルトゥーリー一族と同じなわけです。それなのに、「あんなもの(化け物)になりたいだなんて、気がしれないわ!」と言っちゃってるわけで。

これは、もし自分がエドワードだったら傷つくだろうなあと思いました。ベラが、悪気があって言っているわけではないだけに、それが本音だとわかるだけに、ね。

もし前者の意味だとしても、それはそれで、エドワードにとっては微妙な心境だったろうと思います。「吸血鬼の餌食になるなんてごめんだわ!」と言ってるようなもので。なんというかその・・・非常に複雑な気分になっただろうと思われます。

エドワード、吸血鬼ですから(^^;もう、そのことについては、どうしようもないわけで。

自分の存在を否定されているような・・・。もちろん、エドワード自身が自分の運命を呪い、「魂を失った」とさえ感じているとはいえ、それをあらためて、愛するベラの口から聞かされると、これはね。

ともかく、いろんなことがあって、やっとまた巡り会えた二人ですけれども。一度別離の悲しさを知っただけに、ベラが必死にエドワードとの時間を確保しようとするところが泣けました。

寝ちゃったらもったいない。だって、ずっと一緒にいられるという保証はないから。

そんな気持ちで、疲れきった体にも関わらず、必死に眠気と戦ってる姿が、可愛らしかったです。

そして、飛行機の中。聞きたいことは山ほどあるけれども、今それを聞いたら、エドワードと一緒にいられる時間に終わりがみえてしまう。だからこそ、すべてを後回しにして、時間を稼ごう。シェヘラザードのように、時間稼ぎをするのだ、と決意するベラがいじらしかったです。必死に眠気と戦って、一秒でも、エドワードと過ごす時間を引き伸ばそうとする努力が。

エドワードは全く気付いていないだけに、ベラの気持ちがせつなかったです。

彼を見上げるベラの胸中に、共感しました。きっと、遠い人に見えたと思う。やっと再会して、こんなに近くにいても、どんなに優しくされても。またきっと去っていってしまう。そしたら自分は、今度こそ壊れてしまうのではないか、きっとそんな不安に苛まれて。

祈るような思いでエドワードを見ていたはずです。その目になにもかも焼き付けようと。そして、エドワードの心を、遠く遠く、感じていたのではないかと。自分の知らない世界をさまよう彼の視線の先を、必死に追い求めて。

new moon では、ロザリーの言葉も印象的でした。

ロザリーは、ベラが吸血鬼になることに反対票を投じ、その理由をこう告げたからです。

>…this is not the life I would have chosen for myself.

(これは、私が選んだ人生じゃないの)

>I wish there had been someone there to vote no for me.

(私のときにも、Noと言ってくれる人がいたらよかったのにって、そう思うから)

重い言葉です。ベラに対してはずっと冷たい態度のロザリーだったので、私は最初、あんまり好きじゃなかったんですけど。こういう肝心なときに、人の本当の心ってわかるんだなあと思いました。ずっと誤解してました。ロザリーはむしろ、いい人だったんだ。

彼女はたぶん、ベラを嫌っていたというより、巻き込みたくなかったんじゃないかと。人間として生きていく未来があるのに、なにも吸血鬼の世界に足を踏み入れなくてもいいじゃない、と。吸血鬼として生きることの苦悩を知るロザリーだからこそ、最初はベラを拒絶していた。

そしてたぶん、この反対票が無駄になることも知ってたんですよね。自分が反対しても、状況は逆に動くだろうって。ただ、ここで反対することが、彼女なりの精一杯の優しさ。彼女のみせた誠意なんだと思います。

ジェシカよりよほど、優しい人なんだと思いました。

new moon でみせた、ジェシカの態度は最低です。本当の友達って、相手が自分の思い通りに動かないからって、冷たくなったりはしないと思う。ジェシカのベラに対する態度は、読んでいて本当につらかった。まるで自分がベラになったようで、心が痛かったです。

次の巻、『eclipse』では、どんな物語が展開するのでしょう。

読み終えたらまた、感想を書きます。